交通事故の裁判解決までの期間はどのくらい?裁判手続きの流れも紹介

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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故により生じた慰謝料や損害の請求について話がまとまらないなら、裁判が必要になります。

しかし、「裁判は時間がかかりそうだけど、どのくらいの期間になるのだろう?」「裁判はどのようにして進み、何をすればいいのだろう?」といった不安から、裁判を行うことをためらう人は多いのではないでしょうか?

本記事では、交通事故の裁判にかかる期間や、手続きの具体的な内容、裁判に関する費用などを解説しているので、裁判による解決を検討している交通事故被害者の方は是非確認してください。

交通事故裁判にかかる期間を解説

交通事故裁判にかかる平均期間

交通事故における損害賠償金の支払いを求める裁判は、訴訟を提起してから審理が終了するまでに平均12.4ヶ月の期間がかかります令和元年「裁判の迅速化にかかる検証に関する報告書」から)。

細かい期間の分布は以下のようになっています。

平均審理期間割合
6ヶ月以内19.7%
6ヶ月超え1年以内41.3%
1年超え2年以内32.7%
2年超え3年以内5.3%
3年超え5年以内1%
5年超え0.04%

上記の平均期間や細かい分布は裁判の途中で和解が成立して終了となったケースを含んでおり、判決により終局となった裁判のみの平均期間は18.7ヶ月です。

また、当事者の一方が判決の結果に納得がいかない場合は上訴によりさらに裁判が続くので、訴訟期間が長期化するでしょう。

上記の裁判とは被害者の加害者に対する損害賠償金額がいくらになるのかという点を審判対象とする、私人間の争いを判断する民事裁判です。

加害者の刑罰を判断する刑事裁判は民事裁判とは別に行われ、検察官の起訴により裁判となります。

交通事故の発生から裁判を始めるまでの期間はどのくらい?

交通事故における裁判の期間だけでなく、交通事故が発生してから裁判を始めるまでにかかる期間も気になる部分でしょう。

交通事故において請求できる金額については、その多くが示談交渉により決まります。
そのため、裁判を行うのは示談交渉がもつれたケースがほとんどです。

示談交渉は請求できる金額がすべて判明した時点で開始され、1~3ヶ月程度で終了するので、裁判は示談交渉開始から3ヶ月程度経過してから始まることになるでしょう。

示談交渉が開始される時点については被害者のケガの内容により異なるので、ケガの内容ごとに裁判が始まるまでの期間を解説します。

被害者のケガが完治した場合

交通事故によるケガが完治した場合には、ケガが完治した時点で請求できる金額が判明します。

ケガが完治してから示談交渉を開始することになるので、ケガが完治してからおよそ3ヶ月後に裁判を始めることになるでしょう。

被害者のケガが完治せずに後遺症が残った場合

被害者のケガを治療したものの、完治する前にこれ以上は治療の効果が望めないという症状固定の状態になったのであれば、後遺症が残ることになります。

残った後遺症が後遺障害に該当すると判断されると、後遺障害となった精神的苦痛に対する後遺障害慰謝料の請求が可能となるのです。
後遺障害慰謝料の金額は障害の程度に応じて認定される後遺障害等級により異なります。

また、後遺障害慰謝料以外にも、後遺症により今までのように仕事を行うことができなくなったことから生じる収入の減少という損害を逸失利益として請求が可能です。

逸失利益の金額も後遺障害等級の程度により異なります。

そのため、後遺症が残った場合には後遺障害等級が確定した時点で請求できる金額が判明し、示談交渉が開始可能となるでしょう。

後遺障害等級認定は症状固定後に認定の申請手続きを行い、およそ2~3ヶ月程度で等級が確定します。

後遺障害等級認定の申請方法については『後遺障害認定の手続きはどうすればいい?具体的な申請方法と認定のポイント』の記事を確認してください。

したがって、症状固定となり通院が不要となってから半年程度経過した時点で裁判を始めることになるでしょう。

被害者が死亡した場合

被害者が死亡した場合には、被害者の葬儀や法要に関する費用について請求可能となるため、四十九日の法要が終了した時点で請求できる金額が判明します。

このころには遺族の感情も落ち着いていることが多いので、示談交渉が開始されることになるでしょう。

したがって、被害者の四十九日が終了してから3ヶ月程度経過した時点で裁判を始めることになります。

交通事故裁判の期間に関する概要

  • 裁判にかかる期間は平均12.4ヶ月
  • 判決まで行うなら平均18.7ヶ月
  • 示談交渉が3ヶ月ほどで終わらずにもつれると裁判になる
  • 示談交渉が始まるのは請求できる金額が判明してから

裁判の流れと手続きごとにかかる期間を紹介

交通事故における民事裁判の流れは以下のようになります。

交通事故裁判の流れを説明

裁判手続きの段階ごとにかかる期間の目安は以下の通りとなります。

民事裁判の段階平均期間
訴え提起から第1回口頭弁論の日まで3ヶ月
第1回口頭弁論の日から尋問(人証)の開始まで12ヶ月
人証の開始から終了まで0.2ヶ月
人証の終了から口頭弁論の終了まで1.6ヶ月
口頭弁論の終了から判決まで1.9ヶ月

裁判が最後まで進行する場合には、平均18.7ヶ月の期間がかかることになります。
実際にどのような手続きが行われているのかを手続きごとに紹介しているので、確認してください。

訴状の作成と方法|作成から提出までの期間

裁判を開始するには、訴状を裁判所に提出して提訴する必要があります。

訴状の書式は裁判所ホームページでダウンロードすることが可能です。
記載例もダウンロード可能なため、被害者自身で訴訟を行う際には、記載例をもとに作成を行って下さい。

弁護士に依頼した場合は、交通事故や請求内容の複雑さにもよりますが、およそ1か月程度で作成を行ってくれるでしょう。

訴状は被告人となる請求の相手方の数+1部となります。
訴状だけでなく、証拠書類も添付して提出してください。

そして、申立手数料として請求金額(訴額)に応じた収入印紙が必要になります。

請求金額収入印紙代
~100万10万円ごとに1,000円
~500万20万円ごとに1,000円
~1000万50万円ごとに2,000円
~10億100万円ごとに3,000円
民事訴訟費用等に関する法律別表第1より

また、ご覧の収入印紙代とは別に裁判に関する書類を郵送するために必要となる郵便料がかかります。
一般的に切手を訴状と一緒に送付することで支払うことになり、切手の金額や内訳については裁判所ごとに異なるため、裁判所ホームページや電話で確認してください。

請求額が140万以上なら管轄の地方裁判所、140万円未満なら簡易裁判所が提出先になります。
管轄は原則として被告人の住所地を基準としますが、交通事故裁判の場合は事故が発生した場所を基準とすることが可能です。

また、請求額が60万円以下なら、少額訴訟が利用できる可能性があります。
手続きが簡易化されるため、通常の訴訟よりも早期に終了することが可能です。

提出された訴状の記載内容に問題がなければ、第1回口頭弁論の期日が指定され、被告人に対して訴状が特別送達という方法で送付されます。
第1回口頭弁論の期日は被告人に準備のための時間を与える必要があるという理由から、およそ3ヶ月後になるでしょう。

被告側の反論については、基本的に第1回口頭弁論の前に提出される答弁書から確認することができます。

口頭弁論期日の内容|何ヵ月おきに行われるのか

口頭弁論期日では当事者双方が裁判所に出廷し、お互いの言い分や主張が対立している争点部分がどこになるのかを明らかにしていきます。
また、主張の根拠として提示された証拠の内容を調べることが並行して行われます。

裁判所は当事者が口頭弁論期日で主張した事実や提出した証拠をもとに審査しなければならないので、主張内容や提出する証拠に漏れがないように注意してください。

弁護士に依頼した場合は、代理人である弁護士が出廷すれば十分なため、依頼者である当事者自身の出廷は不要です。

当事者の主張や証拠は事前に裁判所へ書面で提出するため、期日では書面の記載内容や提出した証拠内容の確認のみとなるので、期日ごとにかかる時間は比較的短くなります。

当事者双方が弁護士に依頼した場合は、素早く手続きが進むため多くが10分程度で終了となるでしょう。

口頭弁論の最後に、裁判所が判決を行うために追加の主張や争点整理が必要と判断すれば、次回の口頭弁論期日をいつにするのかが決まります。

裁判所や当事者のスケジュールにもよりますが、交通事故における口頭弁論の間隔は平均1.6ヶ月です。

当事者や証人への尋問(人証)の手続き|口頭弁論の後半に行われる

口頭弁論期日においては当事者や証人に対する尋問が行われることがあり、法廷における当事者や証人の証言自体の証拠を人証といいます。

尋問は準備や実施に手間がかかるため、口頭弁論期日において他の主張立証がなされてから行われることが多いでしょう。

尋問には当事者に対して行う当事者尋問と、証人に対して行う証人尋問があり、以下のように進行します。

  1. 主尋問(尋問を申請した側が行う尋問)
  2. 反対尋問(相手方が行う尋問)
  3. 再主尋問
  4. 再反対尋問
  5. 補充尋問(裁判官からの尋問)

再主尋問や再反対尋問は当事者が希望した場合に行いますが、時間の関係から実施されないケースもあります。

尋問による証言について裁判官が質問したい部分がある場合には、補充尋問が行われるでしょう。

当事者尋問の際には弁護士に依頼している場合でも裁判所への出廷が必要になります。

主尋問でどのような質問や証言を行うのか、反対尋問でどのような質問がされ、どのように答えるのかについては、あらかじめ練習して対処してください。

証人尋問を行う場合には、証人に対して日当を支払う必要があるため、裁判費用が追加で発生します。

尋問手続きは当事者や証人の出廷が必要となるため、基本的に1日で全て終わらせるようにスケジュールが組まれるでしょう。
尋問の対象となる人全員を尋問するので、その日は丸1日裁判に時間を割くことになるつもりでいてください。

判決の手続き|口頭弁論終了から判決までの期間

当事者の主張が出尽くしたのであれば、裁判所による判決がなされるでしょう。

判決の前に、当事者が主張したいことをまとめた最終準備書面を提出してもらい、口頭弁論期日が終結したことで結審となり、裁判所から判決期日が言い渡されます。

交通事故の民事裁判における口頭弁論の終結から判決期日までの期間は平均1.9ヶ月です。

判決期日に裁判所で判決が言い渡されますが、当事者の出廷は不要であり、判決書が郵送されるため、すぐに判決結果を知りたい場合でなければ出廷する必要はないでしょう。

判決に納得がいかないなら上訴しよう

判決結果に納得がいかないのであれば、上訴を行って下さい。
上訴は判決正本を受け取ってから2週間以内に上級裁判所に対して行う必要があります。

上訴は敗訴した側の当事者だけでなく、勝訴したものの判決内容に不服がある当事者も行うことが可能です。

第一審に対する上訴を控訴、第二審に対する上訴を上告といい、交通事故の民事裁判の判決に対しては約40%が上訴されています。

控訴審における審理期間は平均4.7ヶ月です。

上告は基本的に最高裁判所へ行うことになりますが、上告は法律で定められた要件を満たしていなければ行えず、常に行えるわけではないことに注意してください。

判決が確定すると実際の支払いがなされる

上訴が可能な期間中に上訴が行われなければ判決は確定し、原則として取り消せなくなります。
判決内容が加害者から被害者へ金銭の支払いを命じる内容であれば、加害者は内容通りの支払いを行わなければなりません。

判決内容通りの支払いがなされない場合は、判決内容が記載された判決書を証拠として、裁判所に対して支払いを強制するように求めるという強制執行手続きを行うことが可能です。

裁判の途中でも和解による解決が可能

裁判がある程度進行すると、裁判所から和解協議を提案されるでしょう。

和解協議においては、現時点での裁判所の見通しが説明されたうえで、裁判所から和解案が提示されます。
タイミングとしては、人証以外の証拠が出そろった場面で行われることが多いでしょう。

当事者同士が合意すれば、その時点で裁判上の和解により終結となります。

訴訟がある程度進行し、当事者も判決結果が予測できる段階での和解勧告のため当事者が納得する可能性が高いでしょう。
実際、交通事故における民事裁判の約75%は和解により終了となっているのです。

また、加害者に一括で支払う資力が不足しているなら支払いの回数を増やすといった柔軟な解決も可能となっています。

和解によって作成された和解調書は、判決書と同様に強制執行手続きの証拠となります。

和解自体は裁判所で行う必要はなく、裁判外において当事者間の話し合いにより和解が成立した場合も裁判が終結となるでしょう。

裁判の流れについてのまとめ

  • 裁判所に訴状を提出すると口頭弁論の期日が決まる
  • 口頭弁論期日に裁判所で主張を行い、証拠を提出する
  • 裁判所が尋問する必要があると判断した場合は裁判所で証言を行う
  • 口頭弁論が終結後に判決となる
  • 判決に不服がある場合は上訴が可能
  • 裁判中に和解による解決が可能

裁判期間が長引くケースを知ろう

交通事故は事故やケガの内容により、どのような請求がいくら可能であるのかが大きく異なってきます。
そのため、交通事故の民事裁判も事故や請求の内容により判決までの期間が異なってくるでしょう。

判決まで長い期間が必要となりやすい事例をまとめています。
判決までにかかる期間は判決以外での決着を検討する際の重要なポイントとなるので、是非確認してください。

過失割合に争いがある場合

交通事故の多くは被害者の過失も原因となっているので、被害者の過失割合に応じて被害者が請求できる金額が控除されます。

そのため、交通事故における当事者の過失割合は最終的に支払う金額に大きな影響を及ぼすため、紛争となりやすいのです。

具体的には、被害者が請求できる金額が1000万円であり、加害者と被害者の過失割合が70:30とすると、被害者が実際に請求できる金額は700万円となります。

被害者が請求できる金額が高額であると過失割合が少し変動しただけで加害者が支払うことになる金額が大きく変化しうるので、熱心に主張がなされることが多いでしょう。

特に、以下のような交通事故の状況に関する事実についてもめることが多くなります。

  • どちらが赤信号であったのか
  • 速度制限を守って運転していたのか
  • 適切にウインカーやブレーキを作動させていたのか

裁判では、当事者の主張する事実や証拠にもとづいて過去の裁判例における判断を考慮しつつ過失割合が決定されます。

証拠としては、事故状況を細かく検証している警察の作成した実況見分調書や当事者の証言などが重要となるでしょう。

被害者に後遺障害が発生している場合

交通事故によって生じたケガが完治せずに後遺症が残り、その後遺症が後遺障害に該当すると認定された場合は、障害の程度に応じて認定される等級にもとづいた後遺障害慰謝料の請求が可能となります。

また、後遺障害慰謝料以外にも、後遺症により今までのように働くことができなくなったことで将来得られるはずの給料が得られなくなったという逸失利益や、今後の治療や介護に必要な費用を請求することが可能です。

しかし、認定された後遺障害等級が適正な等級ではないとして問題になれば、医療知識にもとづいた判断が必要となるため、裁判所は容易に判断することができません。

また、逸失利益や今後必要な治療費などは正確に算定することが難しく、金額も高額になりやすいので、当事者間で主張が食い違いやすく裁判が長期化しやすいでしょう。

証拠としては、今後の治療や介護の必要性について医師の作成した診断書や医師の意見書の内容が重要となります。

被害者が死亡している場合

死亡事故は特に慰謝料が高額となりやすく、遺族が容易に譲歩しないことが多いため、判決までもつれることが多いでしょう。

また、事故から長期間入院、通院した後に死亡したという事情がある場合には、交通事故が原因で死亡したといえるかという点が問題になることがあります。

このようなケースでは、診断書やカルテから治療経過を明らかにしつつ交通事故と死亡との因果関係を主張してください。

しかし、専門知識が必要になるため裁判所も判断が難しく、結論を出すのに時間がかかることが多いでしょう。

裁判において鑑定が実施されている場合

裁判所が事実認定のために第三者の専門家による調査が必要であると判断した場合には、鑑定が実施されます。

交通事故においては、交通事故により生じる衝撃の大きさや、交通事故で生じたと主張するケガの内容が妥当なものかどうかという点で鑑定が行われる可能性があるのです。

鑑定自体に時間がかかるだけではなく、鑑定が必要ということは専門的判断が必要な部分に紛争が生じているので、裁判所の判断も時間がかかり、裁判が長引きやすくなります。

裁判が長引くケースとは

  • 交通事故当時の状況が不明確なため過失割合に争いがあるケース
  • 被害者に後遺障害が認定されたケース
  • 被害者が死亡したケース
  • 裁判において裁判所が鑑定する必要があると判断したケース

裁判を行うべきケースを紹介

裁判による解決は長い期間が必要となることを考えると、可能な限り避けるべきともいえます。
しかし、事案によっては裁判という手段が望ましいというケースも存在するのです。

裁判による解決が望ましいケースについて解説しているので、裁判を行うかどうか迷っている方は参考にしてください。

請求金額が高額になりそうな場合

交通事故における損害賠償金額を計算する際には、以下の3つの計算基準が利用されます。

自賠責基準

加害者の加入する自賠責保険会社が支払う損害賠償金額を計算する際に利用する計算基準

任意保険基準

加害者の加入する任意保険会社が支払う損害賠償金額を計算する際に利用する任意保険会社独自の計算基準

裁判基準

裁判において損害賠償金額を計算する際に利用される計算基準
弁護士が請求を行う際にも利用されるため弁護士基準とも呼ばれる

3つの計算基準により算定される金額は、自賠責基準が最も低額となり、裁判基準が最も高額になります。

自賠責保険は交通事故被害者に最低限の補償を行う目的を有しており、任意保険会社は保険金として負担することになる金額を少しでも下げたいと考えているため、裁判で認められる金額よりも低くなるのです。

交通事故で請求できる金額の計算基準が複数存在する。
計算基準ごとに金額が異なる。

そのため、被害者は裁判基準で計算された金額が適正な相場額であるとして、損害賠償金の支払いを求めます。

このような被害者からの請求に対して、加害者は自賠責基準や任意保険基準により計算された金額を支払うと提案することが多く、被害者は増額の交渉が必要になります。

そして、請求できる金額が高額になるほど加害者の提案する金額との差がひらく傾向にあるので、示談による解決が難しくなるのです。

一方、裁判を行うと裁判所は裁判基準で損害賠償額を計算してくれるので、加害者の提案する金額よりも大幅に増額した金額を支払うよう命じる判決を得られる可能性が高くなります。

また、判決により損害賠償金の支払いが認められると、遅延損害金の請求も可能です。

遅延損害金とは、基本的に損害賠償請求が可能となる事故の発生時点から今まで損害賠償金を支払わなかったことに対して生じる利息のようなものであり、通常、示談交渉では認められないでしょう。

そして、遅延損害金は実際に支払うまでの期間が長くなるほど加算されていくので、原告である被害者にとって有利になるのです。

もっとも、判決により高額の損害賠償請求が認められるとしても、加害者が十分な資力を有していない、任意保険に加入していないなどの事情がある場合には結果としてお金が支払われないという恐れがあります。

しかし、加害者が仕事で運転している最中に被害者にケガを負わせているなら、加害者を雇用している会社に対して運行供用者責任があるとして請求できる可能性があるといったことを考慮しつつ支払いの可能性を判断してください。

このように、裁判により高額の請求を主張する場合には、加害者が実際に支払うことが可能な金額であるのか、不可能であればほかに請求できる相手がいないのかという点を踏まえて裁判を行うべきかを検討しましょう。

請求金額が高額か判断したい方は以下の計算ツールの利用や、『交通事故|示談金の計算方法を解説!自動計算機で即確認もできる』の記事を確認してください。

高額な請求金額とはいくらぐらいなのか

裁判では大金の支払いを請求するイメージが強いですが、交通事故の民事裁判全体における請求金額の割合は以下の通りとなります。

請求金額割合
500万円以下54.6%
500万円超えから1000万円以下13.4%
1000万円超えから5000万円以下23.4%
5000万円超えから1億円以下5.5%
1億円超えから5億円以下2.6%
5億円超え0.5%

500万円以下が過半数を占めていますが、交通事故において請求できる賠償金額がそもそも500万円を超えないことが実務上非常に多いことが原因でしょう。

請求できる金額が1000万円を超えてくると割合が増加しており、請求金額が高額なため裁判を行っている人が多いようです。

そのため、請求できる金額が1000万円を超えている場合には請求金額が高額であるとして裁判を行うべきでしょう。

当事者間における主張内容の差が大きい場合

交通事故により生じた損害賠償請求権の金額の多くは示談交渉により決まるため、まずは金額をいくらとするのかについての話し合いが始まります。

示談交渉開始の時点で被害者の請求金額と加害者が支払うと提案する示談金額に大きな差が生じている場合には、当事者間の合意が得られず、示談交渉が決裂する可能性が高いでしょう。

示談交渉がうまくいかない場合には、裁判所に民事調停の申し立てを行う、交通事故紛争処理センターといったADR機関に仲介を依頼するという選択肢があります。

調停委員や仲介人が当事者の間に入って解決案を提案してくれますが、示談交渉と同様に当事者の合意がなければ成立しないため、主張内容に差があると解決には至らないでしょう。

裁判を行えば、示談交渉や調停と違い当事者の合意がなくても判決による解決が可能です。
また、不利な判決がなされるリスクを考慮して加害者側が譲歩を行い、和解により解決が可能となるケースもあります。

損害賠償請求権の時効が迫っている場合

時効期間が経過すると請求権自体が消滅してしまうので、慰謝料や損害を請求することができません。

交通事故により生じる請求権の時効期間は、交通事故の生じた日時や請求内容により以下のように異なります。

事故発生日人損部分物損部分
2020年4月1日以降5年3年
2020年3月31日以前3年3年

時効のカウントが開始されるのは、請求可能な程度に損害の発生や加害者を知った時点のため、その多くは交通事故が発生した時点です。

特に、入院や治療期間が長期に渡ったために入院したことに対する慰謝料や治療費の請求が遅くなり、金額について話がまとまらない場合には、時効の恐れが高いでしょう。

悪質な加害者が時効期間が迫っていることから話し合いに応じようとせず、引き延ばしを行う危険もあります。

時効が迫っている場合には、訴訟を提起して裁判を起こし、時効期間の経過を阻止することが可能です。

訴訟の提起を行うと訴訟が終了するまで時効の進行が止まるという時効完成の猶予が生じます。
そして、判決が確定すると時効の進行がリセットされ、時効のカウントが再開するという時効の更新の効果が生じるのです。

時効期間が迫っているという時点では、話し合いによる解決が困難な状況にあることが多いことを踏まえると、訴訟を提起して時効の完成を阻止しつつ裁判による解決を図るべきでしょう。

時効の完成猶予や時効の更新を行う手段は以下のようなものがります。

手段効果
訴訟の提起時効完成の猶予
判決の確定時効の更新
訴えの取り下げ取り下げから半年間は時効の完成猶予
裁判上の和解時効の更新
調停の申立て時効の完成猶予
調停成立時効の更新
調停不成立不成立から半年間は時効の完成猶予
債務の承認時効の更新
催告催告から半年間は時効の完成猶予

示談金の一部が支払われたのであれば債務の承認に該当するでしょう。

催告とは、請求の相手方に対して支払いを求める行為をいい、書面による請求だけでなく口頭の請求も該当します。

裁判を行うべきケースとは

  • 請求できる金額が高額になる可能性があるケース
  • 被害者と加害者の主張が大きく異なっているケース
  • 時効期間の経過により請求権が消滅してしまいそうなケース

裁判を行うなら弁護士に依頼すべき

裁判は被害者本人でも行えますが、専門知識のない個人で行うことは非常に危険です。
やはり、専門家である弁護士に依頼する必要があるでしょう。

弁護士に依頼して裁判を行ってもらった場合に生じるメリットと気になるデメリットを紹介しているので、弁護士への依頼を検討している方は確認してください。

裁判は専門家である弁護士に任せよう

裁判では訴状等の書面を作成する必要がありますが、適切な内容の書面を作成するには専門知識が必要になるでしょう。

また、裁判では法律にもとづいた適切な訴訟手続きを行うことが要求されます。
被害者自身で手続きを行うことはできますが、専門知識が必要な場面も多く、裁判所は中立な立場にあるため積極的に助けてくれることはありません。

そのため、裁判を行うのであれば専門知識を有する弁護士に依頼すべきです。
専門知識にもとづいて適切な訴訟手続きを行ってくれるでしょう。

そして、交通事故案件の経験が豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。
過去の経験から判決の見通しが立てやすく、迅速に手続きを行ってくれる可能性が高いためです。

裁判所の出廷は弁護士だけで大丈夫

弁護士は依頼者の代理人として裁判所に出廷することが可能です。
そのため、依頼者自身は裁判所に出廷することなく裁判を行うことができます。


事故の内容が被害者にケガが生じる人身事故であった場合には、裁判に時間を取られてケガの治療や職場の復帰がおろそかになってはいけません。
また、ケガにより移動が困難となった被害者が裁判所に出廷することは非常に大変です。

もっとも、裁判所が依頼者の証人尋問を行うと決定した場合には、弁護士に依頼していたとしても出廷が必要となります。

弁護士費用を抑える方法を紹介

弁護士に依頼する際には、弁護士に支払う費用がいくらになるのかが気になる方が多いでしょう。

弁護士費用に関しては、弁護士費用特約が利用できれば軽い負担で弁護士に依頼することが可能となります。

弁護士費用特約を利用すれば、基本的に弁護士へ支払う相談料は10万円まで、報酬金は300万円まで保険会社が負担してくれるのです。
ご自分が加入している任意保険の内容を確認してください。

弁護士費用特約が利用できれば弁護士に支払う費用が安く済む。

弁護士費用特約が利用できない場合には、成功報酬のみを支払えばよいという費用設定を行っている弁護士に依頼しましょう。

弁護士へ支払う費用には、依頼の時点で支払う着手金、依頼に成功した際に支払う成功報酬、印紙代や郵便代などの手続きに必要な実費などがあります。

成功報酬のみを支払えばよいのであれば、依頼の時点でお金を支払わなくて済むため依頼を行いやすいでしょう。

また、成功報酬の支払いも加害者からの支払いが行われてから、支払額の何割かということになるので、費用が支払えないという恐れも小さいといえます。

依頼するならアトム法律事務所へ

弁護士に依頼するのであれば、交通事故案件の経験が豊富であり、成功報酬のみを支払えばいいとしている弁護士への依頼がおすすめです。

アトム法律事務所は交通事故案件に力を入れており、今まで多くの交通事故案件を解決しています。
そのため、交通事故案件の経験が豊富な弁護士に依頼することが可能です。

また、基本的に成功報酬のみをいただくことになっているため、初期費用について気にせず依頼できます。


無料相談を行っており、電話だけでなくメールやLINEでも連絡が可能なため、気軽にご相談ください。

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まとめ

  • 交通事故裁判にかかる期間は平均12.4ヶ月
  • 判決までかかる期間は平均18.7ヶ月
  • 裁判中でも和解による解決が可能
  • 被害者が後遺障害を負ったり死亡した場合には裁判が長引きやすい
  • 請求できる金額が高額な場合や時効が迫っているなら裁判を行うべき
  • 裁判を行うなら専門家である弁護士に依頼すべき
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監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点

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