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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
弁護士費用特約は、家族の保険に附帯するものも利用できるケースがよくあります。特に同居の家族の場合、適用範囲がとても広くなっています。せっかく使えるのであれば、忘れずに保険会社へ申請して適用してもらいましょう。
ただし「家族」といってもすべてのケースで適用できるとは限りません。
今回は交通事故に遭ったときに「家族の弁護士費用特約」を使えるケースと使えないケース、適用する方法や注意点を解説します。
交通事故に遭われて弁護士に相談したいけれど費用が気になっている方、弁護士費用特約を使いたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
弁護士費用特約は、保険会社が弁護士への相談費用や依頼料を負担してくれる特約です。
自動車保険に弁護士費用特約をつけていれば、交通事故に遭ったときの弁護士費用を保険会社が支払うので、被害者が自分で弁護士費用を払う必要はありません。
法律相談料なら10万円、着手金報酬金、実費なら300万円が限度額となっているケースがほとんどです。交通事故に遭ったとき、弁護士に相談できると心強いので、適用できるならぜひ利用しましょう。
弁護士費用特約は、被保険者の「家族」が交通事故に遭った場合にも適用されるケースが少なくありません。
適用される家族の範囲は、保険約款により、被保険者との関係や同居か別居かなどの条件で決定されます。以下では一般的な保険約款において、弁護士費用特約を適用できる家族の範囲をみてみましょう。
夫や妻など配偶者は、どのような場合でも弁護士費用特約を利用できます。同居か別居かによる区別はありません。
保険会社にもよりますが、弁護士費用特約は「内縁関係の配偶者」にも適用される例が多数です。婚姻届を出していなくても弁護士費用特約を利用できる可能性が高いので、事故に遭ったら保険契約内容を確認してみましょう。
別居している場合、配偶者以外の家族については「未婚の子ども」だけが弁護士費用特約を利用できます。それ以外の家族には、適用できないと考えましょう。
「独身で1人暮らしをしている人」が交通事故に遭った場合には、親の加入している自動車保険の弁護士費用特約を使える可能性があります。事故に遭ったら親に問い合わせて保険契約内容を確かめてもらってください。
以下のような家族は、被保険者と「同居」していれば弁護士費用特約を利用できます。
血族とは、自分と血のつながりのある親族のことです。たとえば兄弟や親、祖父母、甥姪などが該当します。
姻族とは、配偶者と血のつながりのある親族のことです。義両親や義理の兄弟姉妹などが該当します。
具体的には以下のような人が民法上の「親族」に該当し、弁護士費用特約を使える可能性があると考えましょう。
なお血族の場合、上記以外の遠い親戚でも同居していれば弁護士費用特約を利用できる可能性があります。
同居 | 配偶者 6親等以内の血族 3親等以内の姻族 |
別居 | 配偶者 未婚の子ども |
家族が交通事故に遭ったら、自動車を運転していなくても弁護士費用特約を利用できる可能性があります。
家族が原付や自転車を運転していて自動車と接触事故を起こしたら、弁護士費用特約の適用対象となります。
歩行中の交通事故であっても、相手が自動車であれば弁護士費用特約が適用されます。
友人やタクシーなどの他人の車に乗せてもらっていたケースでも、交通事故に遭った場合には弁護士費用特約が適用されます。
以下のような場合には、条件にあてはまる家族でも弁護士費用特約が適用されない可能性があるので注意しましょう。
家族がわざと危険を発生させて事故を起こした場合や重過失がある場合には、弁護士費用特約が適用されません。
ただし、重過失に至らない「通常程度の過失」であれば、特約を利用できます。「過失があるから弁護士費用特約を使えない」と思い込む必要はありません。
台風や洪水、高潮などの天変地異によって損害が発生した場合、弁護士費用特約は適用されません。暴動によって発生した損害にも特約が適用されない可能性があります。
賠償金の請求相手が契約者本人やその配偶者、子どもや親である場合には弁護士費用特約が適用されません。弁護士費用特約は、契約者や家族を守るためのものだからです。
道路を歩いていてボールをぶつけられた場合、嫌がらせをされてケガをした場合など、「交通事故」ではない「日常の事故」には弁護士費用特約が適用されません。
また「自転車と歩行者の事故」も特約の適用外となるので、注意しましょう。
家族が弁護士費用特約を使いたい場合には、以下のような流れで申請をしてください。
まずは保険会社へ連絡して「弁護士費用特約を使いたい」と伝えましょう。
適用できるケースであれば、保険会社の担当者が承諾します。このとき、保険会社名と担当者名をメモして控えましょう。
弁護士費用特約を適用できる場合、基本的に依頼する弁護士は自分で探さねばなりません。
保険会社は紹介してくれないケースが多いので注意しましょう。また、紹介を受けられたとしても、保険会社と提携している弁護士が良い弁護士とは限りません。
自分でホームページなどを検索して、交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士を探すのが得策です。
良さそうな弁護士が見つかったら、相談の予約を取って面談しましょう。
実際に話してみて、気に入ったら依頼を検討します。その際、弁護士に「弁護士費用特約を適用できるか」確認してください。了承を得られたら、保険会社名と担当者名を伝えましょう。
その後は弁護士が保険会社とやり取りをして、弁護士費用の送金等の手続きを進めます。
依頼者は特に何もする必要はありません。通常通りに示談交渉や後遺障害認定の手続きなどを進めてもらいましょう。
弁護士費用特約を使いたい場合、以下のような状況にご注意ください。
家族が「事業用の車」を運転していて交通事故に遭った場合、弁護士費用特約の適用外とされる可能性があります。事業車と弁護士費用特約については、保険会社によって取扱いが異なるので、個別に問合せてください。
ときおり、保険会社が弁護士費用特約の適用に消極的な態度を示すケースがあります。
たとえば、小さい物損事故のケースや当事者にあまり争いのない交通事故では、担当者から「弁護士をつける必要がない」といわれることもあります。
ただ、小さい事故だからといって弁護士費用特約を利用できないという約款にはなっていません。保険料を払っているのですから、適用してもらいましょう。
保険会社との交渉でもめてしまったら、弁護士に相談してください。状況に応じてアドバイスを差し上げます。
家族が交通事故に遭ったとき「2つ以上の弁護士費用特約が適用される」ケースもあります。
たとえば、夫が自動車保険に弁護士費用特約をつけていて、妻は個人賠償責任保険に弁護士費用特約をつけているケースなどです。
このように2つ以上の保険で弁護士費用特約をつけることを「重複加入」といいます。
重複加入すると保険料が割高になりますが、メリットもあります。メリットとは「限度額が加算」されることです。夫の弁護士費用特約と妻の弁護士費用特約の合計額まで保険金が出るので、相当大きな交通事故でも自己負担額が0円になる可能性が高くなります。
たとえば夫の弁護士費用特約の限度額が300万円、妻の弁護士費用特約の限度額が300万円なら、合計で600万円までの弁護士費用を負担する必要がありません。
重度な後遺障害が残った事故や死亡事故などでは、役に立つでしょう。
ただ、通常は保険料が割高になるとデメリットになるので、重複加入はお勧めしません。
弁護士費用特約は、自動車保険以外の保険に附帯するケースもあります。
最近では、「クレジットカード」に弁護士費用特約が附帯するものもあります。家族へ適用されるケースが多いので、交通事故に遭ったら契約内容を確認しましょう。
せっかく弁護士費用特約をつけていても、保険会社へ申請しなければ利用できません。特に家族の弁護士費用特約を利用できるケースでは、本人も家族も気づかないケースが多いので注意しましょう。
当事務所では、弁護士費用特約を利用した案件に積極的に対応しています。家族の弁護士費用特約を利用できるかどうか知りたい方、約款では利用できるとされているにもかかわらず保険会社に断られた方など、お悩みであればお気軽にご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了