交通事故の慰謝料は通院なしだともらえない?軽傷でも慰謝料をもらう方法

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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故の慰謝料は「事故にあってケガをした」際の精神的な苦痛に対して支払われる損害賠償金のひとつです。交通事故でケガをしたときは、治療費や車の修理費のほか、加害者に対して慰謝料を請求できます。

もっとも、ケガをしたにもかかわらず、病院にかかるほどではないと自己判断して通院しないと、慰謝料がもらえなくなってしまうことになります。

通院しないと慰謝料が支払われない理由や、大きなケガでなくてもきちんと通院して適正な慰謝料をもらう方法について詳しく見ていきましょう。

通院しないと慰謝料の支払いは認められない

慰謝料請求には通院が必須

交通事故の慰謝料を請求するには、必ず病院にかからなければなりません。通院しないと、交通事故でケガをしたという証明ができないからです。

一度も通院しなかった場合、交通事故にあったがケガはしなかったと判断されてしまいます。慰謝料の請求では、ケガが治るまでの「通院期間」が長く、通院した回数を指す「通院日数」が多いほど重傷だと判断されるため、高額になります。

「このくらいなら病院に行かなくてもいいだろう」などとは思わず、交通事故でケガをしたら、たとえ軽傷でも病院に行くようにしましょう。

病院へは事故後10日以内に

交通事故の直後は緊張や興奮で身体の異常に気づかないこともありますが、ケガの早期発見・早期治療のためにも、なるべく早く病院へ行きましょう。

事故から日数が経ってしまうと、病院に行っても交通事故でケガをしたという証明がむずかしくなってしまいます。交通事故とケガの因果関係を証明するためには、遅くとも事故から10日以内には病院に行くのがよいでしょう。

通院日数が少なくても減額されない可能性もある

通院回数と慰謝料の関係

交通事故の慰謝料計算では、通院した期間と回数が目安になります。しかし通院日数が少なくても慰謝料が減額されないこともあります。

たとえば、交通事故で骨折をしたため病院でギプスをつけてもらった後、骨が繋がるまで自宅療養する場合などです。自宅で療養している間は、日常生活に支障が出ていると考えられ、通院の回数に関係なく慰謝料を請求できます。

慰謝料が減額されるケースとは

どのくらいの頻度で通院するかは、医師の指示によるでしょう。ただ、指示があるにもかかわらず通院しなかった場合、慰謝料の減額に繋がることもあります。注意しましょう。

また、1ヶ月の通院回数が10回以下だと、交通事故の慰謝料計算で通院頻度が少ないと判断されることも多いです。通院の頻度は事故にあってからケガが治るまでの「通院期間」の平均で計算されます。

退院後に通院した場合は通院日数に数えられる?

慰謝料計算は医師の診断書が基準に

交通事故によるケガで入院した場合、退院後も通院を続けたほうが慰謝料を多く請求できると思うのではないでしょうか。しかし、通院の理由によっては、慰謝料の計算に含まれません。

手術後の抜糸やリハビリなど、医師の指示があって通院した場合は、通院回数として慰謝料を計算します。
ただし、マッサージだけを受ける、湿布を受け取るだけなどの場合、通院回数として認められない可能性も多いので要注意です。

慰謝料を請求する際には、医師の診断書が必要になります。診断書に記載されている入通院期間を基にして慰謝料の金額を算定します。

接骨院・整骨院への通院は要注意

交通事故でむち打ちになった場合、病院ではなく接骨院・整骨院に通う方もいます。しかし、接骨院・整骨院だけに通っていると通院としては認められない可能性があり、慰謝料どころか治療費すら支払ってもらえない事態となってしまいます。

ただし、交通事故の直後に病院で診断を受け、医師の指示の下で接骨院・整骨院に通った場合であれば、慰謝料や治療費が認められます。医師の指示がない場合は、交通事故のケガの治療としては認められないと思っておきましょう。

通院日数が多ければ慰謝料は増える?

慰謝料計算の基準は3種類

交通事故の慰謝料計算では、通院期間と通院日数が重要なポイントになるとお伝えしました。しかし、通院日数が多ければ慰謝料が増えるわけではないことも覚えておきましょう。その理由を説明する前に、慰謝料を計算するための基準についてお話ししておきます。

慰謝料計算の基準には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」があります。

慰謝料金額相場の3基準比較

自賠責保険は、必要最低限の補償をするためのものなので、3つの基準の中では一番低い金額です。

任意保険基準は、各保険会社ごとに定められているもので、一般には公開されていません。しかし、保険会社も営利企業のため、自賠保険責基準とそれほど変わらないと思ってください。

弁護士基準は、過去に行われた交通事故に関する裁判の判例に基づいた基準です。慰謝料の基準として最も高額になるのが弁護士基準です。

通院日数は治療の範囲内であることが大事

慰謝料を多くもらうために通院日数をむやみに多くすればいいということではありません。
のちほど慰謝料の計算方法を解説しますが、弁護士基準では慰謝料を通院期間で計算するので、不必要に通院しても慰謝料が増額することはありません

通院日数は少ない・多いで考えるのではなく、ケガの状態にあわせて通院することが大切です。

少ない通院日数で慰謝料をもらう方法

弁護士へ依頼する

保険会社は支払う慰謝料の金額をできるだけ抑えようと、通院日数が少ないことを理由にして慰謝料を低く計算してくることがあります。

慰謝料計算の基準の中でもっとも高額な弁護士基準での慰謝料は、通院日数による影響を受けにくい計算方法です。弁護士に依頼すれば、弁護士基準が適用され、自賠責基準や任意保険基準より高額な慰謝料を受け取れます。

増額交渉(弁護士あり)

自賠責基準と弁護士基準の差はいくら?

自賠責基準では、慰謝料は日額4300円と決まっています。(2020年3月31日までの発生した事故では日額4200円です。)
日額に「通院期間」または「通院日数の2倍の日数」を掛けて、どちらか低いほうの金額が支払われます。

したがって、自賠責基準では2日に1回の通院が最高額となり、それ以上通院しても慰謝料の計算には含まれません。

たとえば、通院期間30日のうち2日に1回の通院を行うと、通院日数は15日です。この場合の自賠責基準の慰謝料は以下のような計算式となります。
4300円×30日=12.9万円
4300円×(15日×2)=12.9万円

一方、弁護士基準では「通院期間」に基づいて慰謝料の金額があらかじめ決められています。たとえば、通院期間30日の場合、弁護士基準では重傷で28万円、軽傷で19万円となります。

自賠責基準よりも弁護士基準の方が高額であることがわかります。

通院期間30日のうち通院日数15日の場合の慰謝料

金額
自賠責基準12.9万円
弁護士基準重症28万円
軽傷19万円
差額15.1万円~6.1万円

通院期間30日のうち通院日数15日の場合における自賠責基準と弁護士基準の慰謝料の差額は、15.1万円~6.1万円ということになります。

まとめ

弁護士に依頼したほうが弁護士基準で慰謝料を算定できるので高額になるなど、メリットが大きいです。

また、被害者だけで保険会社とやり取りするストレスを感じるということがあります。心身への負担をできる限り減らしつつ、より高額な慰謝料を受け取るためには、弁護士に相談することをおすすめします。

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監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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