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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
追突事故にあうと、さまざまな後遺症が残ってしまう可能性があります。
後遺症が残ったら、「後遺障害等級認定」の手続きを進めましょう。
後遺障害が認定されると、等級に応じて慰謝料や逸失利益といった補償を受けられます。
今回は追突事故でよくある後遺症と適切な補償を受けるための対処方法を弁護士が解説しますので、追突事故にあわれた方はぜひ、参考にしてみてください。
目次
追突事故とは、後方の車両にぶつかられる事故です。自車が停車しているときや進行中、後方車両が車間距離を見誤って追突してくることによって発生します。
実は数ある交通事故の類型の中でも追突事故の発生件数は非常に多く、警視庁の統計によると、令和元年における交通事故の全件数は381,237件、そのうち車両同士の追突事故の件数は126,062にもなります。
割合にすると33%以上にもなり、交通事故の3分の1以上は追突事故といえる状況です。
車を運転する以上、追突事故は決して他人事とはいえません。自分が注意を払っていても、後ろの車両が注意義務違反で追突してくるので、避けようがないケースも多いのです。
追突事故で特に多い傷病として、どのようなものがあるのでしょうか?
実は追突事故の被害者は「むちうち」や「腰椎捻挫」になりやすい傾向があります。
むちうちとは、首の骨である「頸椎」が損傷を受けてしまう傷病をいいます。
腰椎捻挫は、腰のあたりにある骨である腰椎が損傷を受ける傷病です。一般的に「ぎっくり腰」といわれているので、そちらの方がなじみのある方も多いでしょう。
頸椎や腰椎の内部には人間の感覚や運動などの重要な機能を司る「神経」が通っています。追突の衝撃によってその神経が損傷するので、さまざまな症状が出てしまうものと考えましょう。
なお、交通事故後の頸椎周りの神経症状を全般的に「むちうち」と呼ぶケースが多いのですが、実は「むちうち」は医学的に正式な診断名ではありません。
医師にかかると、「頸椎捻挫」や「外傷性頸部症候群」などと診断されるケースが多数です。また、むちうちや腰椎の損傷であっても酷いケースでは「脊柱管狭窄症」や「椎間板ヘルニア」などの症状に発展してしまうこともあります。交感神経に異常が発生する「バレ・リュー症候群」や脳の髄液が漏れ出す「脳脊髄液減少症」なども、一般には「むちうち」と呼ばれるケースがあります。
むちうちや腰椎捻挫が重症になると被害者は強くしつこい症状に悩まされ、後遺症が残ってしまうケースも少なくありません。
追突事故にあうと、なぜむちうちや腰椎捻挫になってしまうのでしょうか?
それは後ろから強い勢いで追突されると、頸椎や腰椎が一瞬「ぐにゃり」とS字型にしなってしまうからです。骨が不自然なかたちにゆがめられるので、中を通っている神経が損傷を受け、さまざまな症状が出てしまいます。
むちうちや腰椎捻挫になると、以下のような症状が出るケースがよくあります。
むちうちであっても症状が酷くなると、めまいや耳鳴り、頭痛や食欲不振などの全身に症状が出てしまうケースもあります。
交通事故後、調子が悪ければむちうちになっている可能性があるので、すぐに病院を受診しましょう。
追突事故でむちうちになると、治療を受けても完治せずに後遺症が残ってしまう可能性があります。後遺症とは、症状固定後も残ってしまう症状のことです。
交通事故でむちうちになったら、通常は整形外科へ通院して治療やリハビリを受けるでしょう。しかし、長期にわたってリハビリを続けても完治せずに症状が残ってしまうケースが少なくありません。
そんなときには後遺症に対する補償を受けられる可能性があります。
後遺症に対する補償を受けるには「後遺障害等級認定」という手続を経なければなりません。
後遺障害等級認定の手続きについて詳しくは、こちらの関連記事『後遺障害認定の手続きはどうすればいい?具体的な申請方法と認定のポイント』をご覧ください。
後遺障害等級認定とは、自賠責保険や共済が「後遺障害に該当する症状がある」と認定する手続きのことです。後遺症の内容や程度はさまざまなので、認定等級が14段階に分けられています。
1級が最も重症の等級で、14級が最も軽い等級です。
一般的なむちうちや腰椎捻挫の場合には、12級または14級が認定されるケースが多いと考えましょう。
むちうちや腰椎の損傷で後遺障害認定を受けられたら、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」を請求できます。
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことで受ける精神的苦痛への補償金のことです。
追突事故にあって痛みやしびれなどの後遺障害が残ると、被害者は日常生活を送る際にそれまでにはなかった辛さを感じるでしょう。そこで、通常の慰謝料とは別に「後遺障害慰謝料」という特別な慰謝料が支払われます。
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
むちうちや腰椎捻挫、ヘルニアなどになった場合には12級または14級となるケースが多いのですが、12級なら290万円程度、14級なら110万円程度になります。
後遺障害慰謝料についてさらに詳しくは、こちらの関連記事『交通事故の後遺障害慰謝料』もあわせてご覧ください。
逸失利益は、後遺障害が残ったことによって得られなくなった将来の収入のことです。
被害者に後遺障害が残るとそれまでと同じようには働きづらくなり、仕事を辞めなければならないケースもあるでしょう。そうすると、本来得られたはずの収入を得られなくなるので、失われた利益の補償を請求できます。
ただし、逸失利益は誰でも請求できるわけではありません。基本的には事故前に仕事をしてお金を得ていた人に権利が認められます。
たとえば、会社員や自営業者、アルバイトの方などです。さらに、主婦や主夫、子どもにも逸失利益が支払われます。
一方で、無職無収入の方は基本的に逸失利益を請求できません。
逸失利益の金額は、認定された等級や被害者の年齢、年収によって異なります。
14級の場合には数十万~2,300万円程度、12級の場合には500万円以上請求できることも。
後遺障害慰謝料と逸失利益を合計するとかなり大きな金額になるので、追突事故にあったら後遺障害認定を受けることが極めて重要といえるでしょう。
後遺障害逸失利益の計算方法についてさらに詳しくは、こちらの関連記事『後遺障害逸失利益の計算方法は?適正金額を獲得するポイント』もあわせてご覧ください。
追突事故で後遺症が残ったら、以下のように対処してください。
まずは病院で治療を受けることが重要です。
むちうちや腰椎の症状とひと言でいっても、受診すべき診療科が異なるケースもあるので注意しましょう。
一般的な事案であれば「整形外科」を受診すれば間違いはありません。
ただし、バレ・リュー症候群ならペインクリニック、脳脊髄液減少症なら脳神経外科など、場合によっては整形外科以外の病院へ通うべきケースもあります。
まずは整形外科へ行ってみて、症状の原因に応じて適切な診療科を紹介してもらい、通院しましょう。
後遺障害認定を受けるためには、病院における検査結果が非常に重要です。
MRIやCT、レントゲンなどで何らかの異常が発見されると、より高い等級である12級が認定される可能性が高くなります。通院開始時の状態が重要な資料となるケースもあるので、事故直後の時点から病院に通って定期的に検査を受けましょう。
また、画像検査で異常が見つからない場合「神経学的検査」という方法によって症状を明らかにできる可能性があります。
医師と相談をして、必要な検査を受けてください。
後遺症が残った場合、「症状固定」まで通院を継続しなければなりません。
症状固定とは、それ以上治療を続けても症状が改善しない状態をいいます。
症状固定については、こちらの関連記事『交通事故の症状固定はタイミングが重要』でもさらに詳しく解説しています。
交通事故では、症状固定するまでの治療費、休業損害、入通院慰謝料を払ってもらえます。
症状固定前に通院をやめてしまったら、必要な補償を受けられないばかりか後遺障害認定の手続きでも不利になってしまうリスクが高まるでしょう。
また、通院中は一定以上の頻度で病院に通い続けることも大切です。あまりに通院頻度が少ないと「すでにケガは完治している」とみなされて後遺障害認定を受けにくくなってしまいかねません。
仕事や生活に忙しくても、痛みやしびれなどの症状が続いている限り、月10回程度は通院するとよいでしょう。
治療を終了したら後遺障害等級認定の手続きを進めますが、このときの手続きの進め方にも要注意。後遺障害認定の方法には「事前認定」と「被害者請求」の2通りがあり、どちらを利用するかで結果に大きな影響が及びます。
適切な方法を選択し、しっかり資料を提出してより高い等級の認定を目指すには、専門知識をもった弁護士に相談すべきといえるでしょう。
相手の保険会社のいいなりになって手続きを任せてしまうと、辛い後遺症が残っているのに「非該当」になってしまう可能性もあります。
確実に後遺障害等級認定を受けて正当な補償を受けるため、手続きは弁護士に依頼しましょう。
追突事故ではむちうちや腰椎捻挫などの後遺症が残ってしまうケースが多々あります。
そんなときにはしっかり通院して弁護士に後遺障害等級認定の手続きを依頼し、適切な補償を受けましょう。
保険会社との示談交渉も弁護士に任せると、被害者が対応するより高い賠償金計算基準が適用されて後遺障害慰謝料などが大きく増額されやすい傾向があります。
追突事故の後遺症にお悩みであれば、まずは一度、弁護士までご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了