交通事故で家族が寝たきりになったら|後遺障害等級認定や賠償金を解説

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交通事故で家族が寝たきり|後遺障害等級認定や賠償金

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故で被害者が寝たきりになってしまったとき、ご家族の苦しみや悲しみ、今後の不安は、想像を絶するものがあると思います。

ご家族の不安や負担を少しでも減らすためにも、加害者側から適切な損害賠償金を受け取ることは非常に重要です。

この記事では、加害者側から受け取れる損害賠償金の費目や相場を網羅的に解説しています。また、損害賠償を請求する際にまず行う後遺障害等級認定や、示談交渉の流れについても紹介しているので、損害賠償金を受け取るまでの流れがイメージしやすくなるでしょう。

なお、この記事では「寝たきり」を、遷延性意識障害(いわゆる植物状態)や四肢麻痺などの、1日中ベッドで過ごさなければならない状態ととらえて解説しています。

家族が寝たきりになったら後遺障害等級の認定を受けよう

後遺障害とは、交通事故によって残った後遺症のうち、症状の程度が自賠責保険の等級に該当するもののことです。

後遺障害等級に認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害賠償金が請求できるようになります。家族が交通事故で寝たきりになったら、まずは後遺障害等級認定の申請を行いましょう。

後遺障害等級の認定の流れ

後遺障害等級の認定にあたっては、下記のような手続きを踏むことになります。

後遺障害等級認定の手続きの流れ
  1. 事故発生後、まずは入通院治療を行う。
  2. 治療をこれ以上続けても改善が見込めなくなれば、「症状固定」と診断される。
    症状固定と診断されれば、後遺障害等級認定の申請準備をはじめる。
  3. 後遺障害診断書を医師に作成してもらう。
  4. 必要な書類を集め、後遺障害等級認定の申請を行う。
  5. 審査機関(損害保険料算出機構)で書類審査が行われ、後遺障害等級が認定される。

後遺障害等級認定の申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。それぞれの流れと、メリット・デメリットを確認しておきましょう。

事前認定

加害者側の任意保険会社に手続きを一任する申請方法のこと。

被害者側は、加害者側の任意保険会社に後遺障害診断書を提出するだけで、手続きを完結できる。その他の必要書類は加害者側の任意保険会社が準備してくれる。

ただし、加害者側の任意保険会社は後遺障害等級認定に有利になるような工夫を行わない。そのため、本来認められるべき後遺障害等級よりも低い等級となったり、そもそも認定されなかったりする場合がある。

事前認定の流れ

被害者請求

被害者側が自身で手続きを行う申請方法のこと。

被害者側は、後遺障害診断書の他、支払い請求書や交通事故証明書などの必要書類を準備しなければならない。そのため、事前認定に比べて手間がかかる。

自身で必要書類を準備するので、症状を裏付ける医学的証拠を添付するなど、後遺障害等級認定に有利になるような工夫を行える。より適切な後遺障害等級に認定されやすい申請方法と言える。

被害者請求の流れ

寝たきりになったとき認定される後遺障害等級

交通事故で寝たきりになったときは、後遺障害等級の要介護1級1号ないし要介護2級1号に該当すると認定されることが多いでしょう。

それぞれの等級の認定基準は下記のとおりです。

表:介護を要する後遺障害の等級表

等級認定基準
1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

表中の「常に介護を要するもの」とは、食事・入浴・用便・更衣などの生命維持活動が自力で行えず、文字通り常時介護を必要とする状態を言います。
一方、「随時介護を要するもの」とは、生命維持活動にあたってサポートを必要とするものの、常時介護を受けなくても問題ない状態のことです。

過去の判例では、常に介護を要するか随時介護を要するかは、提出された証拠を基に総合的に判断されています。

後遺障害等級が認定されたら示談交渉をしよう

後遺障害等級が認定されたら、加害者側との示談交渉をはじめましょう。

示談交渉の流れは下記のとおりです。

交通事故の示談までの流れ
  1. 後遺障害等級の認定結果が通知される。
  2. 後遺障害等級の認定結果を受け、加害者側の任意保険会社が損害賠償金の金額を提示してくる。
  3. 損害賠償金の金額などについて示談交渉を行う。
  4. 双方が示談内容に納得したら、示談書を取り交わして示談成立となる。

示談交渉を行うにあたっては、事前に弁護士に相談することをおすすめします。

交通事故に詳しい弁護士に相談すれば、加害者側の任意保険会社に提示された損害賠償金が適切か判断してもらったり、場合によれば増額するよう交渉してもらったりすることが可能です。適切な損害賠償金を受け取るにあたって、心強い支えとなるでしょう。

ポイント|意思疎通できないなら成年後見人の手続きが必要

被害者が植物状態などで意思疎通ができないときには、家族が成年後見人となり、被害者本人の代わりにさまざまな手続きを行うことになります。

成年後見人とは?

判断能力が不十分である人の代わりに、法的な判断を行う人のこと。

成年後見人を立てるときは、成年後見人になる人(申立人)を決め、家庭裁判所に後見等の開始の申立てを行う必要があります。成年後見人の申立にかかる費用は、加害者側に請求可能です。

もし、後遺障害等級の申請や示談交渉にあたって弁護士に依頼していれば、成年後見人の選任手続きも弁護士に一任することが可能です。弁護士から成年後見人を選任するにあたってのアドバイスを受けることもできるので、事故後できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することをおすすめします。

家族が寝たきりになったとき請求できる主な損害賠償金

ここからは、交通事故で被害者が寝たきりになったとき、加害者側に請求できる主な損害賠償金の費目を解説します。計算方法や相場もあわせて紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

なお、損害賠償金のうち、慰謝料や休業損害などは、算定する際に用いる基準によって金額が変わります。

算定基準は3つあり、算定する人の立場によってどの基準を用いるかが異なります。ほとんどの場合では弁護士基準が最も高額となるので、覚えておいてください。

表:3つの算定基準

自賠責基準自賠責保険会社が用いる基準。
被害者に補償される最低限の金額。
任意保険基準任意保険会社が用いる基準。
各任意保険会社が独自で設定しており、非公開。
自賠責基準と同程度か、自賠責基準よりやや高額であることが多い。
弁護士基準弁護士や裁判所が用いる基準。
過去の判例を基にした金額であり、法的正当性が高い。
3つの基準の中で最も高額。

(1)慰謝料

慰謝料とは、損害賠償金の一部で、精神的苦痛に対する金銭的な補償です。

交通事故で被害者が寝たきりになった場合、「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「近親者への慰謝料」の3つが請求できます。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、交通事故によりケガを負った精神的苦痛に対する補償です。

ここからは、算定基準ごとの入通院慰謝料の計算方法と相場を順に解説します。

自賠責基準の場合

自賠責基準では、入通院慰謝料は「日額×対象の日数」で計算します。

自賠責基準の入通院慰謝料の算定方法

  • 日額※
    • 2020年4月1日以降に発生した事故の場合、4,300円
    • 2020年3月31日以前に発生した事故の場合、4,200円
  • 対象の日数(下記のいずれか短い方
    • 治療期間
    • 実治療日数×2

※2020年4月1日の民法改正により、2020年4月1日以降に発生した事故と2020年3月31日以前に発生した事故で日額が異なる。

任意保険基準の場合

任意保険基準は各保険会社が定めており、公開されていません。

ここでは、過去に任意保険会社が用いていた「旧任意保険基準」を紹介します。下記の表の入院月数と通院月数の交差するマスに記載されている金額が慰謝料額の相場です。

表:旧任意保険基準の入通院慰謝料の算定表

旧任意保険支払基準による入通院慰謝料
旧任意保険支払基準による入通院慰謝料

弁護士基準の場合

弁護士基準で入通院慰謝料を算定するときも、任意保険基準に似た算定表を用います。

なお、弁護士基準の算定表には、重傷用と軽傷用の2種類があります。軽傷用の算定表は打撲やむちうちなど軽微なケガのみに用いますので、ここでは重傷用の算定表のみを紹介しましょう。

表:弁護士基準の入通院慰謝料の算定表(重傷の場合)

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

たとえば、交通事故で寝たきりになり、3か月入院、6か月通院し、実治療日数120日だったとします。それぞれの基準で計算した入通院慰謝料の金額は、下記のとおりです。

  • 自賠責基準の場合
    • 4,300円×120日×2=103.2万円
  • 任意保険基準の場合
    • 119.7万円
  • 弁護士基準の場合
    • 211万円

上記のモデルケースからも、弁護士基準で計算したときが最も高額になることが、おわかりいただけるのではないでしょうか。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、交通事故により後遺障害を負った精神的苦痛の補償です。

算定基準ごとの後遺障害慰謝料の相場は、下記の表のとおりです。
なお、任意保険基準は自賠責基準と同じ程度となることが多いので、ここでは割愛します。

表:算定基準ごとの後遺障害慰謝料(抜粋)

等級 自賠責基準※弁護士基準
1級・要介護1,650(1,600)2,800
2級・要介護1,203(1,163)2,370

単位:万円
※()内は2020年3月31日までに発生した事故の場合

先述のとおり、交通事故で寝たきりになると、後遺障害等級の要介護1級(要介護)か2級(要介護)に認定されることが多いです。

どちらの等級に認定された場合も、自賠責基準で計算するより、弁護士基準で計算した方が、慰謝料が1,000万円以上高くなるのです。被害者側が自力で弁護士基準を主張しても認めてくれないので、示談交渉をする際は弁護士に依頼することをおすすめします。

近親者への慰謝料

交通事故で被害者がケガや後遺障害を負った場合、基本的には本人分の慰謝料のみが認められます。ただし、重度の後遺障害の場合は、近親者ヘの慰謝料も認められることがあるのです。

近親者への慰謝料の金額には、とくに基準が設けられていません。近親者が受けた精神的苦痛を鑑みて、総合的に判断されます。参考として、過去に近親者への慰謝料が認められた判例を紹介します。

事故で植物状態となり、後遺障害1級に認定された小学生の事例。被害者本人への慰謝料合計3224万円の他に、被害者を養育していた未婚の母に慰謝料800万円を認めた。近親者への慰謝料を認めた理由としては、被害者の成長を楽しみにしていたところ事故で進学や就職といった夢を奪われたこと、単身で被害者の介護にあたらなければならないこと、被害者の今後に不安を抱き続けなければならないことが挙げられた。

(横浜地方裁判所 平成10年(ワ)第938号 損害賠償請求事件 平成12年1月21日)

(2)治療や介護にかかわる費用

治療や介護にかかわる費用についても、加害者側に損害賠償金として請求することが可能です。ここでは主なものとして、下記の費目を紹介します。

  • 治療関係費
  • 入通院付添費
  • 将来介護費
  • 保育費・監護費
  • 装具・器具購入費
  • 家屋・自動車等改造費
  • 雑費

治療関係費

治療関係費として、診察や手術、投薬などにかかった費用を実費で請求可能です。

治療関係費は原則として症状固定となるまでの期間分が認められます。症状固定とは「これ以上治療を続けても改善しないと判断された状態」のことです。

ただし、症状固定後の将来の治療費を認めた判例もありますので、参考までに紹介します。

四肢完全麻痺、呼吸筋麻痺(後遺障害1級3号)に認定された事例。症状固定後も呼吸器系統の状態を維持するため、在宅治療が必要であると判断された。平均余命46年間の週1回の診察費、週2回のリハビリテーション費の合計4291万円のうち、約7割にあたる3,000万円を将来的な治療費として認めた。

(名古屋地方裁判所 平成13年(ワ)第1835号 損害賠償請求事件 平成17年5月17日)

入通院付添費

入通院付添費は、入通院に近親者や職業付添人が付き添う必要があった場合に請求できる費用です。

近親者が付き添った場合、入通院付添費として請求できる金額の相場は下記のとおりです。

表:入通院付添費の相場

自賠責基準※弁護士基準
入院付添費日額4,200円
(日額4,100円)
日額6,500円
通院付添費日額2,100円
(日額2,050円)
日額3,300円

※()内は2020年3月31日までに発生した事故の場合

職業付添人が付き添いをした場合は、実費で請求することができます。

将来介護費

将来介護費は、将来にわたって被害者の介護が必要となった場合に請求できる費用です。

原則的には、後遺障害等級が要介護1級または要介護2級となった場合、将来介護費が認められます。ただし、医師の指示がある場合や症状の程度によっては、上記の等級に認定されなくても認められることもあるでしょう。

将来介護費は、多くの場合、下記の式を用いて計算されます。

将来介護費の計算式

  • 日額×365日×平均余命のライプニッツ係数

日額については、近親者が介護する場合、弁護士基準ならば8,000円が相場です。この金額はあくまでも相場であり、介護体制によっては変動することもあるでしょう。

また、職業介護人が介護する場合、実費で請求することが可能です。状況によっては、一定期間までは近親者による介護、それ以降は職業介護人による介護を行うと想定して請求することもできます。

保育費・監護費

被害者の介護のため、被害者の兄弟姉妹の面倒を見ることが難しくなった場合、保育費や監護費を請求できます。

保育費については、実費が認められることが多いです。監護費については、監護の状況を鑑みて日額で認められることになるでしょう。

参考として、保育費や看護費の請求が認められた判例を紹介します。

保育費が認められた判例

事故により3歳の幼児の付添介護が必要になった事例。被害者の介護で両親が被害者の兄弟2名(当時2歳と0歳)の面倒を見ることが困難となったため、2人を保育園に預ける際の保育費約166万円が認められた。なお、一般的に満4歳になれば保育園あるいは幼稚園に入園させるため、保育費が認められるのは兄弟がそれぞれ4歳になるまでとされた。

(山口地方裁判所 平成2年(ワ)第32号 損害賠償請求事件 平成4年3月19日)

監護費が認められた判例

事故により4歳の子供の付添介護が必要になった事例。被害者の介護で両親が被害者の兄弟(当時2歳)の面倒を見ることが困難になったため、被害者の祖母による監護の必要があると判断された。被害者の兄弟が小学校に入学するまで、日額3,200円の監護費が認められた。

(大阪地方裁判所 昭和63年(ワ)第1332号 損害賠償請求事件 平成5年2月22日)

装具・器具等購入費

被害者の介護にあたって購入した器具や、将来必要となる器具についても、加害者側に損害賠償を請求することが可能です。

具体的には、介護用ベッド、車いす、マットレス、吸引器などが認められます。器具の維持管理に費用がかかる場合や、一定の間隔で買い替えなければならない場合は、将来的な費用も含めて請求することが可能です。

実際にどのような費用が装具・器具等購入費として認められるのか、判例を紹介します。

事故で四肢痙性麻痺などになり、要介護1級に認められた7歳の子供の事例。装具・器具等購入費として、下記のものが認められた。

  • 介護ベッド関係費用
    (耐用年数8年として、平均余命までに9回買い替える。)
  • 車いす費用 2,502,080円
    (耐用年数6年として、平均余命までに13回買い替える。)
  • 吸引器、ベビーモニター、パルスオキシメーター
    (耐用年数が5年を超えないので、平均余命までに15回買い替える。)
  • 起立保持具
    (耐用年数が5年を超えないので、18歳までに2回買い替える。)
  • その他 蘇生バッグなど

(東京地方裁判所 平成25年(ワ)第24064号、平成27年(ワ)第20845号 損害賠償請求事件(第1事件)、求償金請求事件(第2事件) 平成28年2月25日)

家屋・自動車等改造費

介護にあたって、自宅の玄関や浴室、自動車などを改造する必要が生じる場合もあります。そのような家屋・自動車等の改造費についても、相応な範囲で損害賠償を請求可能です。

実際にどのような内容であれば相応な範囲と認められるのか、判例を紹介します。

事故で高次機能脳障害、四肢運動失調などになり要介護1級に認められた60歳の事例。家屋の改造プランは理学療法士や作業療法士、ソーシャルワーカーなどの助言に基づき作成されており、合理的な内容であると判断された。よって、家屋改造費として997.5万円が認められた。

(鹿児島地方裁判所 平成27年(ワ)第368号 損害賠償請求事件 平成28年12月6日)

また、事故当時に住んでいた家屋では介護が困難な場合、家屋の建替や新規購入に伴う費用が認められることもあります。実際にどのような費用が認められるかについては、弁護士に相談してみましょう。

雑費

これまで解説してきた損害賠償の他に、おむつやティッシュなどの看護用雑貨についても請求することができます。

入院中の雑費については、入院雑費として日額で請求が可能です。入院雑費の相場は、弁護士基準で日額1,500円です。

また、将来の介護で必要となる雑費についても、加害者側に請求できることがあります。下記の判例では、現実に支出された月額を基礎にして、損害賠償が認められています。

事故で四肢麻痺となり要介護1級に認められた事例。マスク、紙おむつ、ガーゼ、ゴム手袋などの物品の購入は必要かつ相当なものであったと判断された。症状固定前は日額1,500円、症状固定後は現実に支出された月額47,869円を基礎として、損害賠償を認められた。

(大阪地方裁判所 平成26年(ワ)第5358号 損害賠償請求事件 平成28年8月29日)

(3)寝たきりになって失った収入

休業損害

休業損害とは、交通事故の影響で仕事を休んだため失った収入のことです。

休業損害の金額は、「基礎日額×休業日数」で計算します。なお、休業日数が認められるのは症状固定と判断されるまでです。症状固定と判断されて以降は、後述する逸失利益として請求することになります。

基礎日額は、自賠責基準では6,100円(2020年3月31日以前に発生した事故では5,700円)です。一方、弁護士基準では被害者の収入や平均賃金を基に基礎日額を算定します。

休業損害の詳しい計算方法については、『交通事故でどんな補償が受けられる?慰謝料と休業損害を解説』の記事もご参考ください。

逸失利益|将来にわたって失う収入

逸失利益とは、交通事故の影響で労働能力を喪失したため将来にわたって失う収入のことです。

逸失利益とは本来の労働能力で得られたはずの収入のこと

逸失利益は「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」で計算されます。計算式中の項目の具体的な内容は下記のとおりです。

  • 基礎収入
    被害者の年収や、平均賃金を基に算出する。
  • 労働能力喪失率
    後遺障害等級によって定められている。
    要介護1級および要介護2級では、いずれも労働能力喪失率は100%となる。
  • 労働能力喪失期間
    原則的に症状固定時から67歳までの期間。
    ただし、被害者の年齢や立場によっては原則と異なる場合もある。
  • ライプニッツ係数
    労働能力喪失期間の中間利息を控除するために用いられる係数。

逸失利益の詳しい計算方法は、『交通事故の後遺障害が認定されたら貰えるお金|後遺障害慰謝料と逸失利益』の記事で詳しく解説しています。

家族が寝たきりになったときの損害賠償に関する悩み

ここまで、交通事故で家族が寝たきりになったときに請求できる損害賠償金の費目や計算方法を紹介してきました。

損害賠償の請求にあたっては加害者側と交渉を行う必要があり、その中で悩みや不安を抱える方は少なくありません。家族が寝たきりになったときの損害賠償について、よくある悩みを2つ紹介します。

寝たきりを理由に損害賠償金を減額される?

被害者が寝たきりであることを理由に、加害者側が損害賠償金を低く見積もってくるケースは、残念ながら存在します。

加害者側の言い分としては、「寝たきりであるから平均余命が短い。逸失利益や将来介護費は、平均余命よりも短い期間で計算すべきである」といったものが多いでしょう。寝たきりであると肺炎や感染症などに罹患する可能性が高く、平均余命が短いと主張するのです。

本来であれば、損害賠償金は平均余命を基に算出されるべきです。寝たきりを理由に損害賠償金を減額されたら、医師の意見書などを基に抗弁しましょう。

下記に加害者側の主張を退け、本来の平均余命が認められた判例を紹介します。

交通事故により植物状態となった18歳の事例。加害者側は、平成4年の自動車事故対策センターのデータを参考に、被害者の平均余命を10年とすべきと主張した。しかし、以下の点から裁判所は加害者側の主張を退け、被害者の推定余命を18歳男子の平均余命である59年と認めた。

  • 被害者が寝たきりとなって以降肺炎や感染症を発症していない
  • 呼吸や血圧などが安定している
  • 内臓機能や自律神経機能などの低下も認められない
  • 適切な介護が行われている
  • 異常があれば早期に発見し対処できる態勢が整っている

(大阪地方裁判所 平成13年(ワ)第7604号 損害賠償請求事件 平成15年4月18日)

また、加害者側が「寝たきりだと生活費が比較的少ないはずなので、逸失利益から生活費を控除すべきだ」と主張してくることもあるでしょう。

死亡事故が起こったときは、被害者分の生活費がかからないため、逸失利益から生活費を控除することがあります。しかし、被害者が寝たきりの場合でも生活費はかかるので、生活費を控除するのは不合理と言えるでしょう。

下記に加害者側の生活費分を控除すべきであるという主張を退けた判例を紹介します。

交通事故により植物状態となった14歳の事例。加害者側は、被害者が就労不能であることが明らかであるため、一定程度の生活控除を行うことが合理的と主張した。しかし、被害者の食事内容は材料としては通常の食事と変わらず、生活一般において光熱費を要することや、ガソリン代や被服費も要することを考えると、生活費控除を行うことが相当とは言い難いとして、裁判所は加害者側の主張を退けた。

(仙台地方裁判所 平成20年(ワ)第321号 損害賠償請求事件 平成21年11月17日)

損害賠償金はどう支払われる?

交通事故の損害賠償金は、原則的には一括で賠償金を受け取ることになります。示談が成立したり、判決が確定したりした段階で、すべての損害賠償金を受け取ることになるのです。

ただし、定期金賠償と言って、一定の頻度で賠償金を受け取る方法も認められています。とくに、将来介護費については、定期金賠償で受け取るケースが散見されます。

定期金で受け取るメリットとしては、被害者の実態に即した賠償が可能である点と、中間利息が控除されない点が挙げられるでしょう。一方で、定期金賠償とすると、加害者側の保険会社が破綻し、賠償金が受け取れなくなることもあるので、注意が必要です。

また、令和2年には、後遺障害等級3級に認められた子供の事例で、後遺障害逸失利益についても定期金賠償が認められています。

損害賠償金は原則的に一括で受け取ることになりますが、定期金賠償も検討したい場合は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

家族が寝たきりになったら弁護士に相談しよう

交通事故の損害賠償金にかかわる交渉では、さまざまな争いが起こり得ます。被害者が寝たきりとなった場合、損害賠償金の費目や斟酌すべき事情が多くなるので、なかなか交渉がまとまりにくいこともあります。

よって、交通事故で家族が寝たきりになったときは、弁護士に相談することをおすすめします。

ここからは、弁護士に相談して得られるメリットを紹介します。

示談交渉や裁判の手続きを任せられる

弁護士に依頼すれば、加害者側の任意保険会社との示談交渉や、裁判に関する手続きを一任することが可能です。

交通事故で家族が寝たきりになってしまったとき、家族の方は治療や介護、将来の生活に向けての準備に多くの労力を割かれることになるでしょう。将来に対する不安を抱える方も多いかと思います。

そのような状況で、加害者側の保険会社と交渉を行うのは、大きな負担となるでしょう。さらに、加害者側の保険会社は、支払額を低くするために余命を低く見積もるなど、心無い主張をする場合もあります。

弁護士に示談交渉の窓口になってもらえば、被害者の家族の方はストレスから解放され、被害者の介護などに集中できます。

また、交通事故で寝たきりになってしまったときは損害賠償金が高額になることも多いため、示談がまとまらず裁判となることもあるでしょう。

裁判には多くの手続きがあり、専門知識のない方が自力で行うのは難しいです。法律の専門家である弁護士ならば、複雑な裁判の手続きや、裁判で行うべき主張を熟知しています。

被害者の治療や介護を落ち着いて行うためにも、弁護士に示談交渉や裁判の手続きを任せるとよいでしょう。

損害賠償金の増額が期待できる

弁護士に示談交渉や裁判を任せることで、損害賠償金の増額が期待できるのも大きなメリットと言えます。

先述のとおり、慰謝料や休業損害などには「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つの算定基準があります。このうち、最も高額となるのが弁護士基準です。

大抵の場合、加害者側の任意保険会社は、任意保険基準で計算した損害賠償金を提示してきます。この金額は、弁護士が示談交渉を行うことで、増額される余地があるのです。

また、交通事故の実績が豊富な弁護士であれば、「このような項目も損害賠償金に含めることができるかもしれない」という項目を見つけ、不足なく損害賠償を求めることができます。そのような点からも、損害賠償金の増額が望めるでしょう。

加害者側の保険会社は弁護士が出てくると態度を軟化させることも往々にしてあります。適切な金額の損害賠償金を受け取るためにも、弁護士に依頼するとよいでしょう。

弁護士が増額交渉を行うと増額幅や可能性が高くなる

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監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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