交通事故慰謝料の
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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
交通事故の被害に遭って後遺症が残ってしまうと、被害者は将来にわたって痛みを感じる、以前のように働けず収入が減るなどの損害を受けることになります。
交通事故で後遺症が残ったとき、被害者は加害者に、損害を補償することを請求できます。具体的には、後遺障害を負った精神的苦痛に対する「後遺障害慰謝料」と、後遺障害によって失った将来的な収入である「逸失利益」の2点です。
しかし、後遺障害慰謝料と逸失利益をどのように計算するか、具体的にイメージしづらい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「加害者側から後遺障害慰謝料の金額を提示されたけれど、金額が妥当かわからない」
「逸失利益は年収を基に計算すると聞いたけど、収入がない主婦や学生はもらえないの?」
この記事では、そんな疑問に答えるべく、後遺障害慰謝料と逸失利益の計算方法を詳細に解説します。
交通事故で後遺症が残った方が適切な損害賠償金を受け取るための一助になれば幸いです。
目次
交通事故の被害者は、加害者に事故によって被った損害の賠償を請求することができます。
賠償を請求できる項目のうち、後遺障害等級が認定されることで請求できるようになるのが「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」です。
なお、後遺障害等級認定とは、病気やケガが症状固定となったあとも残っている症状(後遺障害)の程度が、自賠責保険の等級に認定されることを言います。
前提として、慰謝料とは「精神的苦痛を受けたときに請求できる損害賠償金」のことです。
交通事故の被害に遭ったときに請求できる慰謝料には、「入通院慰謝料」、「死亡慰謝料」、「後遺障害慰謝料」の3種類があります。このうち、後遺障害慰謝料は「交通事故によって後遺障害を負った精神的苦痛に対する損害賠償金」のことです。
交通事故で後遺障害を負った場合、将来にわたって痛みを感じたり、生活の中で不便に思ったりすることが想定されます。後遺障害慰謝料はこのような精神的苦痛に対する補償です。
逸失利益とは「後遺障害の影響で労働能力が低下したため失った将来的な収入」のことを言います。
交通事故の被害に遭ったとき、被害者が亡くなった場合は「死亡逸失利益」を請求でき、被害者が後遺障害を負ったときは「後遺障害逸失利益」を請求できます。ここからは後遺障害逸失利益について確認していきましょう。
後遺障害が残ったため、サラリーマンの方は昇進をあきらめたり退職を余儀なくされたりすることがあるかもしれません。自営業の場合は仕方なく事業を縮小する場合もあるでしょう。このような、交通事故による後遺障害の影響で失った将来的な収入が逸失利益です。後遺障害等級が認定されることで、被害者は後遺障害逸失利益を加害者に請求できるようになります。
なお、交通事故の影響で失った収入として、逸失利益の他に「休業損害」というものがあります。休業損害とは交通事故の影響で休業したことによって失った収入のことです。
基本的には、症状固定される前までに失った収入を休業損害、症状固定された後に失う収入を後遺障害逸失利益と覚えておくとよいでしょう。
後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害の等級によって金額の目安が定められています。
後遺障害等級には1級から14級まで区分があり、後遺障害の症状の程度によってどの等級に該当するか決まります。認定された等級によって後遺障害慰謝料の金額が変わるので、適切な後遺障害等級に認定されることは非常に重要です。
実際の後遺障害等級ごとの計算方法については後ほどお伝えします。
複数の後遺障害が残った場合は、基本的には「併合」という考え方で後遺障害等級が認定されます。併合とは、それぞれの後遺障害の等級を組み合わせ、最終的な等級を繰り上げる考え方のことを言います。
後遺障害等級の併合の考え方と具体例は以下のとおりです。
後遺障害等級5級以上が2つ以上ある場合 | 最も重い等級を3つ繰り上げ |
後遺障害等級8級以上が2つ以上ある場合 | 最も重い等級を2つ繰り上げ |
後遺障害等級13級以上が2つ以上ある場合 | 最も重い等級を1つ繰り上げ |
後遺障害等級14級が2つ以上ある場合 | 14級のまま |
後遺障害等級の併合の具体例
後遺障害慰謝料には以下の3つの算定基準があります。
基準ごとの後遺障害慰謝料の相場は下記のとおりです。なお、任意保険基準は自賠責基準とほぼ同程度となることが多いので、ここでは省略しています。
等級 | 自賠責基準※ | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1,650(1,600) | 2,800 |
2級・要介護 | 1,203(1,163) | 2,370 |
1級 | 1,150(1,100) | 2,800 |
2級 | 998(958) | 2,370 |
3級 | 861(829) | 1,990 |
4級 | 737(712) | 1,670 |
5級 | 618(599) | 1,400 |
6級 | 512(498) | 1,180 |
7級 | 419(409) | 1,000 |
8級 | 331(324) | 830 |
9級 | 249(245) | 690 |
10級 | 190(187) | 550 |
11級 | 136(135) | 420 |
12級 | 94(93) | 290 |
13級 | 57(57) | 180 |
14級 | 32(32) | 110 |
単位:万円
※()内は2020年3月31日までに発生した交通事故の場合
表を見ると、自賠責基準と弁護士基準では後遺障害慰謝料が大きく異なることがわかるかと思います。加害者側から提示された後遺障害慰謝料の金額が自賠責基準または任意保険基準で算定されている場合は、増額の余地があることが多いので、弁護士に相談してみましょう。
後遺障害逸失利益は、下記の式を用いて計算されます。
ここからは、計算式のそれぞれの項目について確認していきましょう。
基礎収入とは、被害者の年収や、年収とみなす金額のことを言います。
基礎収入は、被害者が働いている場合は、原則として交通事故の前年の収入を参照します。被害者が主婦や失業者などで働いていない場合は、平均賃金を基に算出しましょう。
基礎収入の求め方は被害者の立場によって異なりますので、以下の場合にわけてそれぞれ確認していきます。
給与所得者の場合は、原則として交通事故の前年の収入を基礎収入とします。
収入は源泉徴収票や給与明細などで確認しましょう。なお、この場合の収入には賞与や手当も含まれます。
事業所得者の場合は、前年の確定申告に記載した申告所得を基礎収入とします。
前年に確定申告を行っていない場合は、帳簿や領収書で前年の収入を証明するようにしましょう。
会社役員の場合は、役員報酬のうち労務提供の対価部分を基礎収入とします。
役員報酬には実質的には利益配当とみなされる部分があります。利益配当は後遺障害等級を認定されても基本的に減少しないため、通常は逸失利益として認められません。
家事従事者は実際に賃金を受け取っているわけではありませんが、家事労働に支障があるため逸失利益の請求が可能です。家事従事者の場合は、女性の平均賃金を基礎収入とします。
また、パートやアルバイトなどを兼業している場合は、実収入の方が女性の平均賃金より高額なときは、実収入を基礎収入とします。
なお、家事従事者が男性である場合も、女性の平均賃金を基礎収入として計算するので注意しましょう。男性と女性で平均賃金が異なるため、不公平さを解消するためにこのような考え方が採用されています。
高齢者は、仕事をしている場合は給与所得者または事業所得者と同じく交通事故の前年の収入を基礎収入とします。家事をしている場合は家事従事者と同じく女性の平均賃金を基礎収入とします。
事故に遭ったときに仕事をしていない場合も、就労する意欲と今後就労する可能性が現実的にあるならば、平均賃金を基礎収入としましょう。このときの平均賃金は、男女別、年齢別のものを参照してください。
なお、年金受給者で今後就労する見込みがない場合は、逸失利益を請求できません。年金は後遺障害等級を認定されても減少するものではないため、逸失利益にはあたらないためです。
未就労の学生、生徒、幼児の場合は、将来に就労する可能性が高いため、逸失利益の請求が可能です。基本的に男女別の平均賃金を基礎収入としますが、大学を卒業する可能性が高い場合は大卒の男女別平均賃金を基礎収入とすることもできますので、覚えておきましょう。
失業者の場合は、就労意欲があり、今後就労する可能性が現実的にあるならば、逸失利益の請求が可能です。基本的に失業前の収入を基礎収入としますが、失業前の収入が平均賃金以下の場合は、男女別かつ全年齢別の平均賃金を基礎収入とします。
労働能力喪失率とは、後遺障害を負ったことで労働能力をどのくらい失ったかを表した数値です。
労働能力喪失率は後遺障害等級によって目安が定められています。なお、後遺障害を負った被害者の職業によっては、下記の目安から増減される場合があります。
等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
労働能力喪失期間とは、後遺障害を負ったことで労働能力が失われた期間のことです。
労働能力喪失期間は原則的には症状固定から67歳までとされています。ただし、被害者の年齢や立場、後遺障害の症状によっては、以下のように原則と異なる期間が労働能力喪失期間とみなされることがあります。
被害者の年齢・立場など | 労働能力喪失期間 |
---|---|
原則 | 症状固定から67歳まで |
18歳未満 | 18歳から67歳まで |
大学生 | 大学卒業時から67歳まで |
67歳に近い年齢 | 67歳までの年数と平均余命の半分のいずれか長い方※ |
67歳以上 | 平均余命の半分※ |
後遺障害がむちうちのみ | 後遺障害等級12級の場合は10年程度 後遺障害等級14級の場合は5年程度 |
※平均余命は厚生労働省が発表している簡易生命表による
ライプニッツ係数とは、労働能力喪失期間の中間利息を控除するために用いる係数のことです。
逸失利益の支払いを受けることで、将来にわたって徐々に得るはずだった収入を一括して手にすることになります。一括してお金を手にすることで、投資や銀行の利息などで本来の収入を上回る可能性が生じます。このような、実際に収入を得た時点から、本来得るはずだった時点までに発生することが予想される利息が中間利息です。
中間利息を控除するために、労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数を用います。
ライプニッツ係数の例は下記の表のとおりです。なお、2020年4月1日に民法が改正されたため、事故発生日によって用いる係数が異なりますので注意してください。
労働能力喪失期間 | 2020/3/31以前 | 2020/4/1以降 |
---|---|---|
1年 | 0.9524 | 0.9709 |
5年 | 4.3295 | 4.5797 |
10年 | 7.7217 | 8.5302 |
20年 | 12.4622 | 14.8755 |
30年 | 15.3725 | 19.6004 |
40年 | 17.1591 | 23.1148 |
50年 | 18.2559 | 25.7298 |
60年 | 18.9293 | 27.6756 |
なお、症状固定となった年齢が18歳未満の場合は、「67歳までのライプニッツ係数」から「18歳に達するまでのライプニッツ係数」を引いて計算します。これは、18歳未満の場合は、多くは18歳まで労働者となることはないためです。18歳になって働きはじめるまでは収入がないため、逸失利益は生じないと考えるのです。
上記の計算を行うのは手間なので、18歳未満の場合は下記の表のライプニッツ係数を用いましょう。なお、下記の表も事故発生日によって用いる係数が異なります。
事故時の年齢 | 2020/3/31以前 | 2020/4/1以降 |
---|---|---|
0歳 | 7.5495 | 14.9795 |
5歳 | 9.6352 | 17.3653 |
10歳 | 12.2973 | 20.1312 |
15歳 | 15.6949 | 23.3376 |
ここまで、後遺障害慰謝料と後遺障害の逸失利益の計算方法を解説してきました。
すでにお伝えしたとおり、後遺障害慰謝料には3つの算定基準があり、弁護士が用いる弁護士基準が最も高額になります。
また、後遺障害の逸失利益は基礎収入が被害者の立場によって異なり、どのように計算したらよいのか迷うこともあるでしょう。
後遺障害慰謝料の金額が妥当か迷ったり、逸失利益の算定方法について疑問があったりしたときは、交通事故に詳しい弁護士に相談してみましょう。
アトム法律事務所は交通事故の解決実績が豊富であり、交通事故の被害者の方からの法律相談を無料で実施しています。電話・LINE・メールの3つの手段で相談することができますので、ご自身の状況にあわせてご利用ください。
相談の予約は年中無休で受け付けていますので、後遺障害慰謝料や逸失利益で不安を抱えている方は、お気軽にお問合せください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了