交通事故の治療の悩み5選|病院に必ず行くべき?治療費の支払いは?

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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

「交通事故でケガをしたんだけど、軽いすり傷だけだから病院に行かなくてもいいかな?」

「交通事故の治療費は誰がどうやって支払うの? 自己負担だとお金が足りなくて困りそう」

「通院先の主治医がいつも忙しそう。丁寧に診察してもらえなくて不安になる」

交通事故で負ったケガを治療するとき、被害者の方はこのように多くの悩みを抱くのではないでしょうか。

交通事故で受けた損害は加害者側に賠償してもらうことになります。適切な損害賠償金を受け取るために何をすればいいのか、逆に何をしてはいけないのか、迷ってしまう方も多いかもしれません。

この記事では、交通事故の治療に関するよくある悩みを5つご紹介します。この記事を読むことで、交通事故に関する治療を受けるときの不安が軽減されるでしょう。

Q1.軽いケガだけど病院に行った方がいい?

事故後なるべく早く受診すべき

交通事故で負ったケガが軽い打撲やすり傷だけのときや、そもそも自覚症状がないときは、病院で治療を受けなくてもよいと自己判断してしまうこともあるかもしれません。

しかし、事故直後はあまり自覚症状がなくとも、あとから痛みやしびれなどの症状が出てくる可能性があります。事故からしばらく経ってから治療を開始すると、事故発生から治療開始まで時間が空いたことから、症状と事故の因果関係を疑われてしまいます。

交通事故の被害に遭ったときは、ケガの程度によらず、なるべく早く病院で治療を受けるようにしましょう。

また、治療は整骨院ではなく、必ず病院で行うようにしましょう。整骨院では検査や医師による診察を受けられないので、症状を見落としてしまう可能性があります。また、整骨院での治療は、正式な手続きを踏まなければ、多くの場合は通院として認められません。

治療開始が遅いと損害賠償金に影響が出る

治療の開始が遅いと、加害者側から支払われる治療費や慰謝料などの損害賠償金が減額される可能性が生じます。

先述のとおり、事故発生から治療開始まで時間が空くと、加害者側に症状と事故の因果関係を疑われてしまいます。症状と事故の因果関係が疑われると、被害者が受けている治療が事故に関係ないものとみなされ、治療費の支払いを拒否されてしまうのです。

また、加害者側から支払われる入通院慰謝料は、入通院の期間に応じて算定されます。治療開始が遅いと、入通院の期間が適切に認められず、入通院慰謝料が本来もらえるはずの金額より減ってしまうこともあるのです。

軽いケガでも自己判断で治療をやめるのはNG!

事故後に受診したはいいものの、軽いケガなので通院を続けることが億劫になり、自己判断で治療をやめてしまう場合もあるかもしれません。

しかし、自己判断で治療をやめると、ケガの完治が遠のいたり、完治ができなくなったりする可能性が生じます。また、治療開始が遅かった場合と同様に、加害者側から入通院期間が適切に認められないことも懸念されます。

それだけではなく、もし後遺障害が残ってしまった場合、自己判断で治療をやめていると、後遺障害等級認定に影響が出ることもあるのです。後遺障害等級認定を申請する際に、審査機関に「通院を続けていれば後遺障害は残らなかったのでは」と疑われてしまうと、適切な後遺障害等級に認定されないおそれがあります。適切な後遺障害等級に認定されないと、後遺障害が残ったときに加害者側に請求できる後遺障害慰謝料が減額されてしまいます。

治療の終了にあたっては、必ず医師の判断を仰ぐようにしましょう。

Q2.交通事故の治療費は誰が支払うの?

基本的に治療費は加害者側の任意保険会社が支払う

交通事故の治療費は、加害者が任意保険会社に加入している場合は、基本的に加害者側の任意保険会社が支払うことになります。

加害者が任意保険に加入している場合、交通事故の被害者の治療費は、加害者側の任意保険会社や自賠責保険会社が負担することになるでしょう。任意保険会社が自賠責保険会社の分の治療費を一旦立て替えて支払うことを「任意一括対応」と言います。

任意一括対応が受けられる期間は、任意保険会社に直接病院へ治療費を支払ってもらえます。よって、被害者は治療費を負担しなくともよくなるのです。

任意一括対応の場合の治療費支払いの流れ

交通事故の被害に遭ったときは、加害者側の任意保険会社に通院先を伝え、任意一括対応を受けるための手続きを行いましょう。ただし、被害者の過失割合が高いときは、任意一括対応をしてもらえないこともあります。

治療費を立替払いしたときは任意保険会社に請求する

前述のとおり、交通事故の被害者の治療費は、基本的に加害者側の任意保険会社が通院先に直接支払います。

しかし、過失割合で争いがある場合、加害者側の任意保険会社が任意一括対応を拒否した場合など、被害者が治療費を一旦支払わなければならないときもあります。その場合は、あとから加害者側の任意保険会社に治療費を請求するようにしましょう。そのために診断書、診療報酬明細書、領収書などを忘れずに取得しておきましょう。

なお、被害者が立て替えた治療費は、原則的に示談成立後に加害者側から受け取ることになります。ただし、場合によっては示談成立前でも受け取れることもあるので、加害者側の任意保険会社と交渉してみましょう。

治療費を立替払いするときは健康保険も利用できる

被害者が治療費を立て替えて支払う場合は、健康保険を利用することもできます。健康保険を利用することで、被害者が一旦支払う金額が治療費の10割から3割に減り、被害者の負担が大幅に軽減されるのです。

なお、健康保険を利用して治療費を支払った場合、本来は加害者が支払うべき金額を、健康保険が立て替えている状態になります。このようなときは、「第三者行為による傷病届」を健康保険に提出する必要があります。交通事故に関する治療費の支払いで健康保険を利用するときは、「第三者行為による傷病届」の提出について、病院の受付に確認するようにしましょう。

Q3.任意保険会社から治療費打ち切りと言われた

治療費打ち切りのタイミングを決めるのは任意保険会社ではない

任意一括対応で治療費を支払ってもらっているとき、加害者側の任意保険会社から「そろそろ治療費の支払いを打ち切ります」と打診されることがあるかもしれません。

加害者側の任意保険会社から治療費の打ち切りを打診されるタイミングとして、以下の例が挙げられます。

  • 平均的な治療期間を過ぎたタイミング
    • いわゆる「DMK136」のタイミングが目安とされる
      • D(打撲):1ヵ月
      • M(むちうち):3ヵ月
      • K(骨折):6ヵ月
  • 通院が長期間空いたタイミング
  • 必要性の低い治療が漫然と続いたタイミング

しかし、これらのタイミングは本来治療費の支払いが打ち切られるタイミングと異なることもあるのです。

加害者側の任意保険会社から治療費の支払いを受けられるのは、「症状固定」とみなされるまでです。症状固定とは、これ以上治療しても改善を見込めない状態のことを言います。症状固定と判断するのは主治医であり、任意保険会社ではありません。

なお、症状固定後に残った症状は「後遺障害」となります。後遺障害とみなされた症状は、これ以上の改善が見込めないため、加害者側から治療費が支払われません。

症状固定のタイミング

任意保険会社は、被害者の治療の状態を詳しく確認せず、大体の目安のタイミングで治療費打ち切りを打診してくることがあります。

加害者側の任意保険会社から治療費の打ち切りを打診されたときは、主治医に症状固定の時期を確認しましょう。まだ治療を受ける必要性があるのならば、加害者側の任意保険会社と交渉することをおすすめします。

治療費が打ち切られても、治療が必要なら通院を続けよう

症状固定と判断されなかったにも関わらず、任意保険会社からの治療費の打ち切りが避けられないケースも中には存在します。その場合は、症状固定となるまで治療を継続し、示談交渉で加害者側の任意保険会社に治療費の支払いを求めることも可能です。

示談交渉において必要となるので、医師の診断書や領収書などの証拠を忘れずに取得しておくようにしましょう。

治療費の打ち切りについて疑問がある場合は、弁護士に相談してみてもよいでしょう。交通事故に詳しい弁護士ならば、治療費の打ち切りが適切か判断し、状況に応じて治療継続の必要性を交渉することも可能です。

Q4.通院先の主治医と相性が合わない

医師との相性は重要なので転院を検討しよう

通院先の主治医との相性は、実はとても重要になります。

通院先の主治医との相性が悪く、通院することが億劫になって通院頻度が減ってしまったら、ケガの治りが遅くなります。また、通院頻度が低いと、加害者側の任意保険会社から不必要な通院と判断され、治療費や入通院慰謝料が減額となることもあるのです。

さらに、後遺障害が残ってしまったケースでは、後遺障害等級認定への影響も懸念されます。治療途中で通院しなかった期間があると、治療状況が不自然であるとみなされ、適切な後遺障害等級に認定されない可能性があるのです。

主治医と相性が合わず、治療方針に不満があるときは、転院を検討するとよいでしょう。

転院するときは加害者側の任意保険会社に伝える

通院先を変えるときは、必ず加害者側の任意保険会社に連絡するようにしましょう。大抵の場合、加害者側の任意保険会社は転院先でも治療費の支払いを続けてくれます。

ただし、あまりに転院回数が多いと、加害者側の任意保険会社に応じてもらえない場合もあります。頻繁な転院は、加害者側の任意保険会社に「被害者に都合のよい通院先を探すため、必要以上の転院を行っている」と判断されてしまいかねないからです。

転院する際は、転院先の下調べをし、納得できる治療が受けられるか検討しましょう。あらかじめしっかりと検討することで、何度も転院するような状況が避けられます。

Q5.整骨院で治療を受けてもいい?

整骨院の治療費を請求するときは手続きを踏む必要がある

先に述べたとおり、整骨院での治療は、必要な手続きを踏まなければ通院として認められず、加害者側から治療費の支払いを受けられません。

整骨院での治療を行いたい場合は、以下の手順を踏むようにしましょう。

  1. まずは病院で医師の治療を受ける
  2. 整骨院で治療することについて、医師に許可をもらう
  3. 整骨院で治療することを、加害者側の任意保険会社に伝える
  4. 整骨院での治療を開始する
    並行して病院にも定期的に通い、治療継続の必要性を判断してもらう

必ず病院での治療も継続しよう

必要な手続きを踏んで整骨院で治療を開始した場合も、必ず病院での治療を継続するようにしましょう。

治療継続の必要性や、症状固定の時期については、医師に判断を仰ぐ必要があります。また、整骨院にしか通っていない状態だと、加害者側から必要な治療は終了していると判断されかねません。

くわえて、後遺障害が残った場合は、治療経過を医師が診ていなければ、後遺障害等級認定に必要となる後遺障害診断書に適切な記述をしてもらえないこともあります。

治療費や慰謝料の請求で不利にならないためにも、医師が治療終了と判断するまで、病院に定期的に通うことを忘れないようにしましょう。

注意!整体院やカイロプラクティックは原則請求不可

整骨院に似た治療施設として、整体院やカイロプラクティックがあります。これらの施設への通院は、原則的に治療行為として認められません。

整骨院は柔道整復師の国家資格者が施術を行います。一方、整体院やカイロプラクティックでは国家資格を持たない者が施術を行うこともあります。施術者が国家資格を持っていない場合、治療行為として認められない可能性が非常に高いのです。

なお、カイロプラクティックは海外では国家資格として法制化されている場合もありますが、日本には法的な資格制度が存在しません。

整体院やカイロプラクティックで受ける施術は、ほとんどの場合は治療行為として認められず、加害者側に施術料を請求することもできませんので、注意しましょう。

交通事故に関する悩みは弁護士にも相談しよう

交通事故に関する悩み、とくに治療に関する悩みは、主治医にだけ相談していればよいと思う方もいるかもしれません。

しかし、加害者側に損害賠償を請求するときなど、弁護士が交通事故の被害者の強い味方となることは多いのです。

ここでは、交通事故に関する悩みを弁護士に相談するメリットを3つご紹介します。

メリット1.被害者が治療や社会復帰に集中できる

交通事故の被害者は、交通事故で受けたケガの治療や社会復帰と並行して、加害者側との示談交渉を進めなければなりません。示談交渉には時間と労力がかかり、精神的に疲弊してしまう方も少なくありません。また、加害者側が提示してきた示談の内容に合意してよいか判断がつかず、不安を覚えてしまう方もいるでしょう。

弁護士に示談交渉を任せることで、被害者の方は治療や社会復帰に専念できるようになります。

弁護士は法律のプロなので、被害者に不利な条件で示談が成立しないよう交渉を進めてくれるでしょう。また、交渉の窓口を弁護士に一任することで、手間やストレスも軽減されます。

くわえて、治療方針に関する心配事も弁護士に相談できる場合もあるので、被害者の方はより安心して治療を受けられるでしょう。

メリット2.治療費打ち切りなどの問題に対処できる

先に述べたとおり、交通事故の治療を続ける中で、加害者側の任意保険会社から治療費の打ち切りを打診されることがあります。しかし、治療費の打ち切りが妥当であるか、被害者自身では判断が難しいのではないでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士であれば、治療費の打ち切りが妥当か判断することが可能です。もし治療費の打ち切りが妥当ではないと判断した場合は、治療継続の必要性を主治医から任意保険会社に伝達するよう交渉することで、対処することもできるでしょう。

メリット3.慰謝料の増額が期待できる

実は、交通事故の慰謝料には以下の3つの算定基準があります。

自賠責基準自賠責保険が用いる基準。
被害者に補償される最低限の金額。
任意保険基準任意保険会社が用いる基準。
自賠責基準とほぼ同額か、自賠責基準より少し高額な程度。
弁護士基準弁護士や裁判所が用いる基準。
過去の判例を基にした金額であり、法的にも適正な金額。
3つの基準の中で最も高額。

被害者自身が加害者側の任意保険会社と示談交渉を行うとき、多くの場合は任意保険基準で算定された金額が提示されます。この金額は、弁護士が示談交渉を行い、弁護士基準まで引き上げることで、増額される可能性があるのです。

慰謝料金額相場の3基準を比較

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監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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