自転車と車の交通事故|怪我なしでもとるべき適切な対処法は?

更新日:

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

自転車は、日常に密接で利便性の非常に高い乗り物として、広く多くの人に利用されています。

しかし、自動車ほどではないにせよ、かなりの速いスピードで小回りが利く特性ゆえに、細心の注意を払って利用しないと大きな危険性をはらんでいます。

この記事では、自転車と車の交通事故が起きた場合を想定し、その過失割合の考え方を説明するとともに、物損事故と人身事故の違い、現場での判断と事後手続について解説します。

車と自転車の過失割合は?

普段、気軽に乗っている自転車ですが、軽車両に該当し(道路交通法2条1項11号)、車両(同項8号)として扱われています。したがって、交差点における他の車両等との関係等(同法36条)、車両等の灯火(同法52条)、酒気帯び運転等の禁止(同法65条)等の車両に関する規定の適用を受けます。その結果、自動車や単車と同様の規制に従う必要があります。

当然、車との比較では、車の方が高い注意義務が求められるため、多くの事故態様において自転車の過失割合の方が低く評価されるのが事実です。

ただし、自転車の過失が0と評価されるのは、信号のある交差点で青信号に従って直進しようとした自転車に赤信号を無視した車が突っ込んできたときぐらいのものです。

他の大多数のケースでは、多少なりとも自転車側に過失が認められます

また、原付の制限速度である時速30km程度で走行していた場合には、単車と車の交通事故での過失割合の基準が参考にされることになり、この点にも注意が必要でしょう。

怪我なしの場合は慰謝料もらえない?

交通事故における慰謝料は、入通院慰謝料(傷害慰謝料)、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料に分類されます。慰謝料はいずれも、交通事故によって受傷したことで被った精神的苦痛を緩和することを目的としています。

自転車が関与した交通事故でも考え方は全く同じで、事故によって負傷してしまった場合には慰謝料を請求することが可能となります。

つまり、幸いにして交通事故による怪我がなく、通院も不要だった場合には慰謝料は発生しません。怪我なしの場合、自転車や自動車、所持品などの物的損害のみが問題となります。

もっとも、怪我といっても出血を伴う外傷のみを指すわけではありません。とても軽微な身体的不調が生じたとしても、それは交通事故による怪我であり、慰謝料の対象となります。
怪我がないかどうかは自己判断すべきではありません。本当に怪我がないのかは、病院にいって医師の診断を受けてから決まります。

怪我なしでも警察に届ける理由

警察への報告は義務

道路交通法72条1項後段によれば、交通事故に係る車両等の運転者は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署に110番通報し、事故について次の事項を報告する義務があります。

  • 交通事故が発生した日時及び場所
  • 交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度
  • 損壊した物及びその損壊の程度
  • 交通事故に係る車両等の積載物
  • 交通事故について講じた措置

この通報を受け、警察官が事故現場を調査することになりますが、その調査の内容は物損事故と人身事故で異なります。

物損事故では、警察官が現場の状況を確認し、当事者からの話を聞くなどした後、「物件事故報告書」を作成します。もっとも、これは簡易的なものに過ぎませんが、絶対に実況見分を行わないということではありません。

そのため、事故原因等に争いが生じるおそれがあるような場合には、実況見分の実施を強く申し入れることも可能です。

人身事故の場合には警察官により現場の実況見分が行われ、事故状況を把握するため、現場道路の状況、運転車両の状況、立会人の説明が記載され、交通事故現場見取図や写真などが添付された実況見分調書が作成されます。

事故の種類にかかわらず、保険手続や示談交渉の基礎となる重要な証明書や資料が作成されることとなりますので、警察への報告義務を怠ることのないようにしましょう。

通報しないよう加害者から言われた場合

加害者によっては、社会的な事情や免許点数の関係など、交通事故を大っぴらにしたくないあまり、法律上の義務である警察への報告をしないよう求めるケースがあります。

とりわけ、自転車と車の交通事故はさほど大きな被害が出ないことも多く、自動車側から話を小さく済まそうとするケースが散見されます。

しかし、上述のとおり、警察への報告は法律上の義務であるだけでなく、警察が介入することによって証明書類等の資料が作成されます。それらの書類は、後の示談交渉において重要な役割を果たすことになりますし、自分の保険会社に提出しなければならないものもあります。

断りづらいと感じたとしても、決して通報義務を怠ってはなりません。また、その場でいくらかの現金で示談を求められたとしても、応じることのないよう注意しましょう。場合によってはご自身が不利な状況に立たされることにもなりかねません。

事故後しばらくしてから怪我が発覚した場合

交通事故直後は興奮状態になったり神経が昂っているため、その場では怪我の自覚症状がない場合があります。典型的なものが「むちうち症」で、後から痛みが起こり始めるケースが多いものとして知られています。事故直後に多少の痛みがあっても、日常生活に追われる中で、痛みを我慢して病院に行かないということもあるのです。

しかし、相手方の保険会社としては、事故と初受診の日が離れていると、事故と症状の因果関係を疑うことになるのです。そのため、事故後しばらくしてからであっても、怪我が発覚した場合には直ちに病院を受診し、交通事故に遭った経緯も含めて医師に伝えて治療を開始すべきです。

そして、仮に事故を物損事故として処理してしまっていた場合には、人身事故への切り替えを行うのがよいでしょう。

人身事故に切り替わった場合どうなる?

人身事故なら実況見分調書が作成される

人身事故に切り替わると、当事者の立会いのもと、改めて現場で実況見分が行われ、警察官によってより詳細な調書が作成されます。自分が覚えている事故当時の状況をしっかりと話し、相手方の言い分と食い違っていても、自分の記憶に従って遠慮なく主張することが大切です。

その後、人身事故の事故証明書が入手可能になり、自分の保険会社、相手方の保険会社その他、交通事故により負傷したことを証明する必要のある場面で有効に使用することができます。もちろん、当事者や保険会社との示談交渉を有利に進めるための重要な資料にもなります。

人身事故に切り替える手続き

人身事故として扱われるためには交通事故による負傷の事実が必要なので、怪我や痛みが発覚し次第、速やかに病院を受診しましょう。

多くの場合、受診するのは整形外科です。そして、事故による負傷の診断書を取得します。交通事故の衝撃は相当な物なので、自分で些細な怪我だと決めつけることはやめましょう。気になる症状をきちんと申告し、必要があれば脳神経外科等、必要な科目も受診して詳細に調べてもらいます。

次に事故を取り扱った警察署へ診断書を持参し、物損事故から人身事故への切り替えを申請します。この申請は、事故の発生から早いうち、具体的には1週間から10日以内に行う必要があります。

あまりに日数が経過してしまうと、事故と負傷の因果関係が不明となり、当事者の記憶も曖昧になるため、正確な実況見分ができず、そのために申請が却下されてしまう場合があるのです。

交通事故にあったら弁護士に相談

事故から時間が経ってから痛みが出てくることもあるので、まずは安易に物損事故として処理しないことが大切です。特に自転車は車と比較すると明らかに軽量で、しかも体を守る枠がなくむき出しの状態です。

冷静に考えれば、何らかの怪我が生じていない方が不自然とさえ言えるでしょう。

人身事故における示談交渉については、弁護士に依頼することによって、過去の判例に基づく弁護士基準による慰謝料の大幅増額等、多くのメリットがあります。

仮に怪我のない場合であっても、過失割合は同じです。物的損害についてしかるべき賠償を請求する交渉も、弁護士に依頼することによって、よりスムーズに解決することが期待できるでしょう。

まとめ

自転車と車の事故であっても、自転車は車両の一種として一定水準の注意義務が求められます。過失割合があるのなら自転車でも責任を負わねばなりません。そのため、車と車の交通事故と同じように、事故直後には警察に通報する義務があり、怪我の有無に応じて物損事故または人身事故として警察官の調査を受ける必要があります。

しかし、現実では、自転車事故だと相手方から軽視され、警察への通報さえ止められてしまうということも聞かれます。警察への通報をせずに、後から怪我が発覚した場合には、泣き寝入りになってしまうリスクが伴います。しっかりと法律上の義務として警察へ通報し、できる限り人身事故として実況見分の実施を願い出ましょう。

物損事故として処理された後に怪我が発覚した場合には、人身事故に切り替える手続きを行いましょう。その際、相手方との交渉を弁護士に依頼することで、慰謝料が適正な金額まで引き上げられる可能性が高まります。交通事故にあってどうしたらいいのか分からず不安な方は弁護士に相談してみましょう。

シェアする

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点

あわせて読みたい記事