交通事故慰謝料の
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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
交通事故示談金の多くを占める項目として「慰謝料」がありますが、交通事故で怪我のない被害者は、原則として慰謝料を請求できません。
被害者にまったくの落ち度がない場合であっても、物損のみでは慰謝料請求をしないのが原則だからです。
また、ケガが軽傷である場合、通院日数が少なくなることがあります。
そのような場合、被害者は通院日数ともらえる慰謝料について把握しておかなければならないポイントがあります。
当記事では、正確な治療期間を前提に、慰謝料に焦点を当てて解説していきましょう。
目次
まずは、被害者が交通事故で請求できる示談金について知っておきましょう。
示談金は損害賠償金の総称であり、慰謝料はその一部です。
交通事故で請求できる慰謝料には3つの種類があります。
さきほど紹介した慰謝料の金額を確定するには、以下の計算基準をもちいます。
交通事故示談交渉は人により千差万別ですが、被害者が加害者側任意保険会社と示談交渉する場合、どの計算基準をもちいたのか注意してみる必要があります。
先述のとおり、入通院慰謝料とは入院や通院をしたことに対する慰謝料ですので、それらの証明が必要になります。
よって、ケガのない事故の場合は原則として慰謝料の請求はできません。
後遺障害慰謝料についても然りです。
しかし、慰謝料請求に通院が条件になるからといって、だらだらと通院日数をかせぐことは得策ではありません。
また逆に、まだまだ治療の必要があるのに、加害者側保険会社の都合で治療を打ち切る必要もありません。
ポイントは、しっかりと医師と相談することです。
医師が治療が必要という限りでは、療養にまっとうすることを重視しましょう。
この章では、入通院慰謝料の計算方法に焦点を当てて解説していきましょう。
以下用語説明です。
交通事故でのケガにより、治療を開始したときから症状固定までの期間をいいます。
たとえば1月1日から3月末日まで通院していた場合、治療期間は90日間となります。
※1月は30日と考えます
実際に病院で受診した日数のことです。
「実通院日数」ともいわれています。
たとえば治療期間1月のあいだに、毎週月曜日に通院していた場合、通院日数は4日となるでしょう。
ここでは、さきほど紹介した「弁護士基準」での慰謝料計算をみていきましょう。
弁護士基準では、原則「通院期間」をもとに慰謝料計算されます。
またその金額は、以下の表で理解できます。
この表は、民事交通事故訴訟「損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)にのっているものと同じです。
弁護士基準の金額算定には、重傷ケースと軽傷ケースがあり、むち打ち症や他覚症状がないもの以外は重傷ケースを使います。
重傷ケース
軽傷ケース※むち打ち症など
例
骨折で入院1か月・通院2か月の場合
→98万円(重傷ケースの表参照)
例
むち打ち症で入院なし・通院3か月の場合
→53万円(軽傷ケースの表参照)
上記のように、基本的には治療期間のみで慰謝料算定できることがわかります。
ではここで、自賠責基準で計算してみるとどうなるのかについてもみていきましょう。
自賠責基準で入通院慰謝料を計算する場合
弁護士基準と違い、実通院日数も金額に反映されます。
以上のことから、弁護士基準で計算した場合、実通院日数がかならずしも反映されないこともわかります。
さきほどまでのお話で、弁護士基準で計算された慰謝料金額は実通院日数が反映されにくいことがおわかりいただけたかと思います。
だからといって、どのような場合でも少ない通院日数で1か月単位で計算された慰謝料がもらえるわけではありません。
以下では、そのような通院日数が少ない例についてお話ししていきましょう。
今回も、入通院慰謝料を例にご説明します。
自賠責基準での通院に関する支払い部分は、ケガつまり傷害部分です。
自賠責保険の傷害部分の上限120万円については、自賠法施行令で定められているとおりです。
また先述のとおり、自賠責基準で計算された慰謝料通院日数が反映されます。
当然ですが、通院日数が少なければその分慰謝料の金額も下がります。
自賠責基準はそもそも低額算定であるため、実通院日数が計算式に盛り込まれると、ぐんと低額な慰謝料が算出されるのです。
任意保険基準で計算された場合、つまりは任意保険の担当者との交渉があいだに入るわけですが、通院期間が長い場合保険会社から交渉を持ちかけられることがあります。
どういうことかといますと、被害者の通院期間が長引く場合、保険会社は実通院日数の3.5倍の金額で主張してくるのです。
軽傷ケースですと、3倍くらいともいわれています。
少しイメージがわきにくいので、先ほどの入通院慰謝料表の金額を、コンパクトな表にしてみてみましょう。
実際の通院期間と実通院日数 | 訂正される通院期間 |
---|---|
入院なし・通院期間2月だが実通院日数は8日 | 8日×3=24日 |
入院なし・通院期間3月だが実通院日数は10日 | 10日×3=30日 |
入院なし・通院期間6月だが実通院日数は24日 | 24日×3=72日 |
弁護士基準で計算した場合、軽傷ケースの表ですと、入院なし・通院期間6月が交差する慰謝料額は89万円です。
ただ上記の例ですと、週に1回ペースでしか受診(通院)していませんので、72日が通院期間であると任意保険から主張されるというわけです。
では、弁護士基準ではどのように算定されるのでしょうか?
被害者の方が第一に注意していただきたいのが、弁護士基準を主張できるからといって、少ない通院日数でも高額な慰謝料がもらえるわけではないということです。
さきほと任意保険から主張されやすい金額・訂正期間についてお話ししましたが、実際の裁判例でも、上記のように減額されるケースは多く存在します。
被害者はなにより、通院の目的は治療であることを忘れないでください。
では一体、自分は何にもとづいて通院したらいいのだろうと思われた方もいるかもしれません。
実通院日数が少ないと、確かに慰謝料の金額は下がりますし、多いと慰謝料の金額は上がります。
しかし任意保険と交渉をしていく際、被害者が鵜呑みにしてはいけないのが「任意保険の指定する通院期間」です。
任意保険としては治療の終了を促してくることが通常ですので、そのような交渉を持ちかけられた場合は、弁護士などに相談してみるといいでしょう。
もらい事故でむち打ち症などの軽傷であっても、治療期間が必要であれば病院にかかりましょう。
被害者の通院で大切なことは、治療が必要な期間だけ正しく通院し、弁護士基準をもとに正しい慰謝料を請求することです。
最後に、物損事故の慰謝料例についても紹介しましょう。
冒頭のとおり、被害者にケガのない物損事故では、原則として慰謝料請求は認められません。
なぜなら、慰謝料という精神的損害を慰謝する金銭は、物損の場合修理によって精神的苦痛も慰謝されると考えられているためです。
しかしなかには、ケガのない事故でも慰謝料請求が認められた裁判例も存在します。
犬の葬儀費用2万7000円のほか,長い間家族同然に飼ってきたことを理由に,飼い主に慰謝料5万円を認めた。
東京高判平16.2.26 交民37・1・1
乗用車が被害者の陶芸作品を損壊した事案につき,財産的損害は否定したが,被害物件が代替性のない芸術作品の構成部分であり,被害者が自らそれを制作した芸術家であることなどから,慰謝料100万円を認めた。
東京地判平15.7.28 交民36・4・969
人身事故の被害者の方は、示談交渉について1人で抱え込む必要はまったくありません。
むしろ、専門家に頼った方が賢明です。
被害者の方は、ご自分で警察連絡などの現場対応をする必要はありますが、それ以降についてはきちんと治療をおこなうのみです。
当記事でご説明したとおり、加害者側任意保険からの交渉に惑わされてはいけません。
治療期間中には休業損害の請求も可能ですし、治療期間が終われば、後遺障害についても検討していく必要があります。
被害者は、示談締結までに数々の試練・疑問に直面することになるでしょう。
もらい事故では特に、ご自分の保険会社は示談交渉にあたってくれません。
示談交渉・解決のカギは、知識と経験です。
すこしの疑問であっても、弁護士に相談することで、次のステップや示談締結からそれ以降の未来が激変する可能性があります。
アトム法律事務所では、24時間365日相談予約受付をおこなっております。
ケガの治療や遠方でお困りの方についても、まずはお気軽にご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
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