交通事故慰謝料の
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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
当記事では、おもに自賠責保険の過失割合や過失割合にまつわる制度について解説しています。
自賠責保険は国が定める強制保険であり、自動車を運転する方には加入が義務付けられています。
また、その目的は、自賠責保険の過失割合基準にも影響しているのです。
まずは自賠責保険についての制度を理解したうえで、人身事故被害者が主張できる過失割合や損害金についてご説明していきましょう。
目次
自賠責保険は被害者保護を目的としています。
(この法律の目的)
第一条 この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。
自賠法1条
自賠責保険は、車を運転する人がかならず加入しなければならない保険です。
その理由は、目的条文(1条)に明記されています。
自賠責保険は任意保険と違い、特殊性があります。
被害者救済を目的としているため、自賠責保険が支払われない事由についてはかなり限定されているのです。
請求者によほどの過失がない限り、自賠責保険からの支払いは制限されません。
また、自賠責保険は損害の公平性を保つことも目的をしており、どの保険会社であっても保険料は変わりません。
よって、任意保険のような等級制度ももうけられていないのです。
任意保険が保険請求の多い加入者の保険料を上げるのに対し、自賠責保険は、加入者の支払う保険料を一律にしていることになります。
自賠責保険は、他人に対する怪我の補償です。
(自動車損害賠償責任)
自賠法3条
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
自賠法3条に規定されている責任が認められない場合、自賠責保険は支払われません。
また、条文上の「他人」に該当する人ですが、任意保険の対人賠償保険と違い、かならずしも血縁関係のない他人を指しているのではありません。
ここでいう「他人」とは、自賠法に定める運行供用者や運転者等以外を指しているのです。
昭和47年最高裁判決では、被害者が運行供用者の配偶者などであるからといって、そのことだけで「他人」に該当しないと解するわけではないと判示しています。
よって、自賠法3条の「他人性」については具体的な事実関係をもとに判断されることになります。
運行供用者とは?
運行供用者とは、自動車の走行や管理についてまでコントロールできる人をいいます。
また、同条では他人の生命または身体を害したことと規定しています。
つまり、他人である被害者に怪我があったり、死亡させてしまったりした場合に、自賠責保険が適用されるということです。
自賠責保険は被害者に大きな過失がない限り、保険金が支払われることについてはお伝えしました。
また、被害者救済の制度として、自賠責保険には「重過失減額」というものがあります。
重過失減額とは、被害者の方に重過失が認められた場合、受け取ることのできる保険金が減額されるというものです。
ここで、任意保険と比較してご説明します。
任意保険から損害賠償金が支払われる場合、人身事故の怪我に対しては対人賠償保険が適用になります。
対人賠償保険は自賠責保険の上積み保険ですが、こちらは純粋に過失割合に応じて支払われるものです。
つまり、被害者に過失があった場合、その分の支払いを加害者に対し請求することはできません。
また、確定した過失割合に応じて過失相殺がなされます。
過失相殺とは、請求できない被害者の過失分を損害額から減額したうえで、被害者に支払われる制度をいいます。
対して、自賠責保険には過失相殺がありません。
先ほどの重過失減額が適用になり、被害者の過失が一定の範囲を超えたときだけ自賠責の補償を減額されるのです。
よって、任意保険のように過失分がそのまま減額になるのではなく、以下の基準に応じ、減額される仕組みとなっています。
まずは怪我の場合をみていきましょう。
傷害の重過失割合
被害者の過失割合 | 減額される割合 |
---|---|
7割未満 | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割 |
8割以上9割未満 | 2割 |
9割以上10割未満 | 2割 |
つづいて後遺障害または死亡したケースです。
後遺障害の損害とは、後遺障害等級認定申請後、1級から14級に認定されることにより請求できる損害です。
後遺障害または死亡の重過失割合
被害者の過失割合 | 減額される割合 |
---|---|
7割未満 | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割 |
8割以上9割未満 | 3割 |
9割以上10割未満 | 5割 |
表を見てわかるとおり、7割未満の過失であれば自賠責から減額されることはありません。
被害者にどれだけ過失があったとしても、減額される割合は最大5割です。
また、傷害による損害で20万未満であった場合には、減額されないようになっています。
当然ですが、10割過失があれば、自賠責保険自体支払われることはありません。
次章では、重過失減額にまつわる注意点についてもお話ししていきます。
さきほど、自賠責保険には過失相殺がないというお話をしてきました。
その代わりに適用される制度が、重過失減額というものでした。
重過失減額は、自賠責保険の趣旨からしてよほどの過失がない限り減額されないとお伝えしましたが、実は注意点があります。
交通事故の慰謝料などを算定するとき、もっとも高額算定されるのは「弁護士基準」を用いたときですが、弁護士基準は通称「赤い本」にのっとった計算方法です。
用語説明
ここで赤い本と弁護士基準について解説しましたが、通常弁護士基準を採用すると、被害者の受け取ることのできる慰謝料など損害賠償金は高くなります。
よって被害者は、示談交渉を弁護士に依頼するなどし、慰謝料額を計算した方が得なのです。
しかし、被害者の過失があまりに大きい場合、弁護士基準(赤い本基準)で計算された損害賠償額がかならずしも高額になるとは限りません。
くり返しになりますが、自賠責保険には過失相殺という制度がないため、純粋な過失割合が損害賠償額に反映されません。
損害賠償額を弁護士基準で請求すれば、いかなる場合も賠償金が高額になると思われがちですが、そうではないということです。
被害者にかなりの過失があるにもかかわらず、自賠責基準をさしおいていきなり訴訟などをすると、かえって損する場合があるのです。
重過失減額の例
9割の過失があるにもかかわらず、過失相殺がないために、8割分の保険金を得られたという結果になりました。
弁護士基準のみを優先し、被害者の過失分を無視して請求してしまうと、純粋な過失割合が適用されるため注意が必要です。
よってこのような場合、自賠責保険から先行して損害金を請求していく必要があるのです。
過失の大きい被害者の方は、自賠責保険の活用について弁護士に相談されることをおすすめします。
これまでお伝えしてきた重過失減額のほかに、「因果関係不明の減額」といった被害者救済制度もあります。
まず、自賠責保険には素因減額という制度がありません。
素因とは一般的に、「心因的要因」のものと「体質的・身体的要因」とに分けることができますが、これらの要因が被害者に認められた場合は、加害者の支払う損害金から減額されるというものです。
過去の判例には、以下のような減額事由が肯定されています。
素因減額例
つまり、自賠責保険では心因的・身体的な素因が被害者にあっても、その損害にすこしでも事故との因果関係が認められるのであれば、素因の減額はされないのです。
また、どうしても因果関係を証明できない場合にだけ50%減額されます。
もうすこし平たくいえば、事故という原因と、被害者の損害である結果に結びつきがある限り、基本は加害者の支払う損害金は減額されないということです。
ただ、どうしてもその結びつきがわからない、不明だという場合に限り、加害者の支払う損害金が50%減額されることになります。
原因が明らかでない損害にまで、加害者に全ての負担を強いるのはおかしいからです。
自賠責保険の請求方法にはおおきく2つあります。
被害者請求
被害者請求は、自賠法16条に規定された被害者側の特別な権利です。
被害者が怪我などについてご自分で請求する手続きなので、請求先は加害者加入の自賠責保険になります。
ご自分で請求手続きをする分手間は発生しますが、とくに後遺障害等級にかかわる請求などは、被害者請求を選択した方が賢明でしょう。
なお、被害者請求と後遺障害等級については『交通事故で被害者請求はすべき?手続きの方法や必要書類、限度額もわかる』を参考にしてください。
加害者請求
自賠法15条に規定された請求方法です。
自賠責保険はあくまで「責任保険」であるため、こちらが本来の請求方法といえるでしょう。
加害者側が自分の責任を果たしたあと、自身の加入する自賠責保険に請求を行うというものになります。
自賠責保険は単純なものととらえられがちですが、実は奥深く特殊です。
被害者が自賠責保険の請求に際し、どのような流れで手続きをするかについて相談されたい場合は、弁護士相談が最適でしょう。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了