死亡事故の慰謝料と相続の関係

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死亡事故の慰謝料と相続の関係

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通死亡事故において、遺族が加害者や保険会社に慰謝料を請求するためには、慰謝料と相続の考え方を理解する必要があるので、まとめてみました。

死亡事故の慰謝料の相続分は!?

わたしは、おばあちゃんの死亡事故で慰謝料を相続できますか!?

きみは孫に当たるから、原則として相続する権利はないね。

孫に相続権がないなんて、信じられません!

死亡事故の慰謝料は、大きく分けて被害者本人の慰謝料遺族固有の慰謝料に分かれるそうです。裁判例の傾向としては、遺族固有の慰謝料は、被害者本人の慰謝料の2~3割程度の金額になることが多いとのこと。

被害者本人の慰謝料は、被害者の死亡と同時に、相続人に相続されることになります。相続人の資格には、法律上定めがあり、配偶者は常に相続人になることができるそうです。

一方、配偶者以外の場合は、子、直系尊属(父母、祖父母など)、兄妹姉妹の順番で相続人となることができるようです。

相続人と相続分の組み合わせは、以下の表の通りで、たとえば子が複数いる場合には、1/2の相続分を人数分で均等割りして相続分を決めることになるようです。

<死亡慰謝料の相続分>

 

配偶者

直系尊属

兄妹姉妹

1/2

1/2

2/3

1/3

3/4

1/4

実際には慰謝料をどのように相続するの!?

慰謝料の相続の仕組みについて、実際の事例を使って教えてください!

あとで裁判例の事例を使って説明するね。基本は、被害者の慰謝料を相続分で割り算して、遺族固有の慰謝料を加算すればいいんだよ。

相続分の計算とか、素人にはややこしそうですね。

弁護士さんから教えてもらったところによると、死亡慰謝料は被害者本人のものと遺族固有のものに分かれていて、遺族は被害者本人の慰謝料を相続するとのことだそうです。複雑で分かりにくいので、実際の事例を利用して教えてもらいました。

以下の表は、実際の裁判例での認定例です。被害者は39歳の主婦の事例で、遺族は夫、子供3人と被害者の両親がいたようです。

裁判所は、死亡慰謝料について、本人に2400万円、夫に200万円、子供3人に各100万円、両親に各50万円を認めました。この場合、本人の2400万円の慰謝料相続の対象になります。

夫の相続分は1/2であり、子供3人の相続分は各1/6になるため、以下の表にある計算過程を経て、最終的に夫が1400万円、子供が各500万円、父母が各50万円を請求できる計算になります。

なお、実際の死亡事故では、死亡慰謝料以外にも逸失利益や事故から死亡までの入院期間中の傷害慰謝料なども請求することになるので、より複雑になるそうです。

死亡事故では、損害賠償の請求権者が多くなり、相続問題もからみ、複雑な事例になりがちです。弁護士を介して手続きを進めると、慰謝料などの賠償額がアップするとともに、確実にお金を払ってもらえることが多いので、弁護士への相談・依頼がお勧めです。

<死亡慰謝料の相続と請求額のケース>
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相続人同士で示談の方針が食い違った場合は!?

死亡事故で、遺族の意見が対立した場合はどうなりますか!?

相続人同士で解決方針に食い違いが出ると、裁判になる可能性が高くなるね。

そんなことより、亡くなった被害者のためにも、遺族同士で一致団結すべきです!

交通死亡事故で特徴的なことは、被害者が死亡しているため、複数の相続人が損害賠償請求権を相続する可能性がある点だといいます。

複数の相続人同士で、死亡事故の解決方針が一致している場合には、保険会社との任意交渉で条件が折り合えば示談が成立し、条件が折り合わなければ相続人全員で裁判を起こせばいいそうです。

一方、相続人間で事故の解決方針に食い違いがあるときは注意が必要です。弁護士さんによると、交通事故の損害賠償請求権は、相続人間での遺産分割を経ずに当然に法定相続分に従って相続されるので、示談するために相続人全員の同意は必要ないそうです。

そのため、一部の相続人が保険会社と条件を合意できれば、個別に示談することも可能といえます。しかし、通常、保険会社は一部の相続人とだけ示談することを嫌がる傾向にあるので、事実上、個別での示談は難しいそうです。

そのため、相続人間の方針の相違がある場合には、各相続人が個別に加害者に対して裁判を起こすことが多いようです。

死亡事故では、交通事故の賠償問題だけでなく、相続問題も複雑に絡み合うことがあるので、紛争が泥沼化しないうちに弁護士に相談・依頼するのがお勧めですね。

(まとめ表)

  相続人間で示談方針が一致 相続人間で示談方針が相違
保険会社と条件を合意可能 相続人全員で示談

(個別に示談)

保険会社と条件を合意できず 相続人全員で訴え提起

個別に訴え提起

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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