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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
もらい事故とは、被害者側に過失のない事故をさします。
たとえば、後方から追突された事故や、駐車中に相手方から衝突された事故が該当するでしょう。
被害者にまったく過失のない事故の場合は、相手方の保険で修理費や治療費などをまかなってもらえるのが通常です。
しかし、状況によっては相手方の保険がかならずしも使えるとは限りません。
当記事では、事故の内容別に、等級ダウンのしくみや被害者が使用できる保険について解説していきましょう。
目次
保険の等級は、当事者双方の過失割合によって決まるものではありません。
もらい事故であってもそうでなくても、自動車保険を使用すれば基本的に等級はダウンします。
事故の加害者が見つからない場合や、加害者側の保険金が支払われないような事情がある場合、被害者側の保険を使用する場面も出てくるでしょう。
そのようなケースにおいて、もらい事故でも等級が下がるといえます。
事故を起こして保険を使用すると、契約者の保険等級は3等級ないし1等級下がります。
自動車保険の保険料は、事故を起こした回数や使用した保険の内容によって決まる「等級」により、個々に変わってくるのです。
等級は、一部の共済を除き、通常1等級~20等級まで設定されています。
上に上がれば上がるほど無事故無違反であると考えられ、そのぶん保険料も安くなっているのです。
たとえば、事故を起こして相手方の補償である対物賠償保険や対人賠償保険を使用した場合、次年度の等級は3等級ダウンします。
そうすると次年度からは「事故あり等級継続期間」となり、保険料の割引率が下がるしくみになっているのです。
事故あり等級のしくみ(例)
現在16等級/1度の事故で、対物賠償保険と対人賠償保険を使用
→3等級ダウン/事故あり等級継続期間3年
上記(例)の場合、次年度の等級は13等級事故あり等級継続期間3年となります。
また、その年度中に事故を一度も起こさなければ、等級はまた1等級上がりますので、翌々年度の等級は14等級事故あり等級継続期間2年となります。
事故あり等級継続期間によって設定される数字を「係数」と呼びますが、事故あり係数は1年ごとに減算されるため、1回目の事故以降保険を使用しなければ、毎年2年・1年・0年と減っていき、3年かけて事故あり係数は消滅することになるのです。
上記(例)では、次年度の証券には「13等級/事故有(あり)係数3年」と表記されることが多いでしょう。
事故あり等級継続期間に再度、事故を起こして保険を使用した場合はさらに3年ないし1年の係数が加算されます。
3年ないし1年といっているのは、ダウンした等級によって数字が変わるしくみになっているためです。
また、事故あり等級継続期間にもちいる係数は、最大6年となっているのが基本です。
よって、それ以上の係数がつくことはありません。
このように、保険を使用した場合は細かく等級設定がおこなわれ、保険の割引率にも増減が出てくるのです。
このことは、「等級別割引」や「等級別割増制度」と呼ばれています。
ここで注意したいのは、低い等級により高額設定となる保険料ですが、保険料を支払っていれば何度でも保険が使用できるわけではないということです。
あまりに多く保険金を請求していると、保険の契約を更新してもらえない場合もあるでしょう。
特に軽微な物損事故である場合、次年度以降の保険料増額分より修理費の方が安くつく場合もあります。
その場合、保険を使用せず、自費で対応した方が賢明といえるでしょう。
冒頭で触れたとおり、もらい事故でも等級がダウンするケースはあります。事故状況別に、等級についてみていきましょう。
もらい事故で1等級下がるケースとは、基本的に車両保険を使用した場合です。
車両保険は、ご自分の車にかけている保険で、車の損害に対して補償がさなれるというものです。
もらい事故で車両保険を使用した場合でも、3等級ダウンするケースがあります。
また、保険を使用しても等級が変わらないものもあります。
以下に例をあげてみましょう。
次章では、事故の被害者が利用できる、等級に影響のない保険について詳しくみていきましょう。
被害者にまったくの過失のない事故の場合、ご自分の保険を使用することをためらう方は多いでしょう。
しかし、等級の下がらない保険であれば、被害者が利用するぶんにも安心です。
人身傷害補償保険とは、ご自分側の怪我や後遺障害、死亡に対して補償される保険です。
保険の支払い対象は、記名被保険者(保険の中心者)やそのご家族だけに限らず、事故の際乗っていた車に搭乗中の他人であっても補償が受けられます。
幅広いケースで利用できるのが特徴で、ご自分の過失の有無にかかわらず、等級や保険料を気にしなくていいため非常に役に立ちます。
もらい事故の場合で相手方が無保険だったときでも、人身傷害補償保険を使用すれば、ご自身側の怪我については補償が可能です。
また、他の車に乗車中怪我をした場合であっても、基本的に補償が可能です。
おもに、125CC以下のバイクに搭乗中の事故に対して補償される特約です。
この特約を付けていれば、ご自分の原付でない借用車であっても、相手の治療費などが補償されます。
完全なもらい事故というよりかは、ご自分にも過失があり、相手方への補償も必要な場合に利用できる保険です。
また、特約によっては自損事故に対して保険金が支払われるものもあります。
弁護士費用特約は、交通事故の示談交渉で利用できる保険です。
弁護士に示談交渉や訴訟を依頼した場合、被害者であっても弁護士費用は発生します。
弁護士費用特約を付帯していれば、基本的に弁護士費用が300万円まで補償され、別途相談料金も10万円まで補償してくれます。(金額は保険会社により異なる場合があります)
また、年間の保険料も約4千円ほどと安く設定されているため、契約者も付帯がしやすいでしょう。
交通事故の被害にあわれた方にとって、示談交渉の内容は運命の分かれ道となります。
次章でもうすこし詳しく解説していきますが、もらい事故やその他の被害事故にあわれた方は、弁護士費用特約を積極的に利用するといいでしょう。
さきほど、等級が下がらない保険のひとつとして「弁護士費用特約」をご紹介しました。
弁護士費用特約は、交通事故訴訟のみならず、示談交渉にも利用できる保険です。
特に、もらい事故のような被害者に全く過失のない事故の場合、保険会社は示談代行をすることができません。
これは弁護士法72条に規定されている決まりであり、弁護士以外が報酬を得る目的で、被害者にかわって示談交渉をおこなうことはできないとされています。
ただし被害者にも過失がある場合、保険会社は損害賠償責任を負うため、保険会社は被害者にかわり示談交渉ができるのです。
保険会社としては、基本的にもらい事故に限り弁護士費用特約の加入・利用をすすめていることが多いです。
しかし、弁護士費用特約はご自分に過失のある事故であっても、積極的に利用した方がお得といえるでしょう。
その理由は、被害者が受け取る賠償金に関係しています。
交通事故の示談交渉においては、実損で支払われる賠償金があります。
おもに治療費や修理費が該当しますが、これらについては、実損以上のものを相手方に請求することはできません。
しかし、精神的苦痛に対して補償される慰謝料などは、3つの支払い基準により受け取る金額に影響します。
結論、弁護士に示談交渉を依頼すれば、被害者の受け取る賠償金は、最も高額な弁護士基準で計算されます。
3つの支払い基準について以下表にまとめてみましょう。
基準 | 内容 |
---|---|
自賠責基準 | 強制保険である自賠責保険の基準で計算される金額。 3つの基準のなかで最も低く、最低ライン。 |
任意保険基準 | 任意保険会社が独自に設定している保険金の支払い基準。 自賠責基準よりはすこし上がるとされるが、詳細は企業秘密で非公開。 |
弁護士基準 | 別名「裁判基準」。 裁判で損害賠償請求する際にも使用される、最も高額算出が可能な計算方法。 |
過失の割れる事故の場合、事故の当事者が弁護士依頼の意思をもたない限り、示談交渉は保険会社同士でおこなわれます。
その場合、上記表中の「任意保険基準」による低額な示談金で決着されるでしょう。
逆をいえば、示談交渉を弁護士に依頼した場合は、任意保険基準から弁護士基準に賠償金額が引き上げられる可能性が高いです。
もらい事故の場合、被害者側に保険会社がつきませんので、自分自身で示談交渉をしていく必要があります。
それは示談交渉の経験のない被害者にとって、非常に酷な状況といえるでしょう。
示談交渉には、法律家の知識が欠かせません。
弁護士費用特約を付帯していれば迷いなく、弁護士費用特約の付帯がなくても、弁護士依頼による費用倒れがないかどうか弁護士に聞いてみましょう。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
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