駐車場での事故にはどう対応するべき?交通事故扱いにならない駐車場での事故対策方法

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mimi

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

「駐車場で当て逃げされたんだけど犯人が見つからない」
「こちらは悪くないのに50対50の過失割合にされそう」
「そもそも駐車場での事故ってどう対応するの?」

駐車場での事故には対応方法がいくつかあるのですが、経験してみないと分からないことだらけではないでしょうか?
実際に事故を起こしてからでは、相手に上手く示談されてしまう可能性もあります。

事故の3割が駐車場内での事故といわれています。(一般社団法人 日本損害保険協会東北支部「駐車場事故の実態」より)

そこで今回は駐車場で事故にあったときの対応方法から過失割合、罰則など、詳しく解説していきます。しっかりと確認しておきましょう。

駐車場で事故にあったときの対応 

駐車場で事故を起こしてしまった場合、自分が加害者か被害者かを問わず、冷静な対応が必要です。

負傷者の救護

まず、事故当事者のケガの有無を確認します。自分や相手にケガがある場合は救急車を呼びましょう。

自身にケガがない場合は負傷者の救護に向かってください。負傷者の救護も事故の場合の義務となります。負傷者の意識がない場合は、上体を揺らしたり起こしたりしないように注意が必要です。

また、二次被害が起きないよう、車を移動させたりして周りの安全を確保することも大切です。車を移動させられない状況であれば、発炎筒を使うなどして新たな事故の発生防止に努めてください。

警察への連絡

救急車を呼ぶなどの救護ができたら、次に警察への連絡もします。なるべく場所を離れずに事故現場の住所を伝えるのが好ましいでしょう。

住所がわからない場合には、電柱や標識に書かれている住所や近くの目印を伝えましょう。

保険会社への早急な連絡

警察の到着を待つ間、自分が加入する保険会社へ連絡します。自分が被害者でも保険会社への連絡は必須です。

事故の状況確認

事故の相手と話すことが可能であれば、事故の簡単な状況確認をしておくと証拠になります。走行スピードや安全確認の有無、相手の連絡先なども聞いておきます。

病院の受診

現場検証や聴取が終了したら、ケガの認識がなくても病院の受診をおすすめします。特に事故直後は身体が硬直し、ケガに気が付かない可能性もあります。

後々、後遺症が見つかっても事故直後に受診していなければ事故に起因するものと認められない可能性が高くなるため、ケガをしていないと思っても念のため病院に行くようにしましょう。

駐車場の事故にはどんなものがある?

駐車場の事故には「壁やパーキングの機械などに衝突する物損事故」と「自動車同士の衝突や接触、歩行者との人身事故」などがあります。

車両と歩行者の事故

駐車場での事故が多い理由は法定速度の規定がなく、駐車できる場所を探しながらの走行で車両の動き方が不規則になることがあげられます。
ただこれは車両に限らず歩行者も同じであるため、速度は遅くても事故が起こりやすいのです。

駐車区分の出入り事故

駐車していた車両が駐車区分から出る際、走行している車両を想定して注意する必要があります。
また、走行車も駐車区分から出る車両を想定する必要があるため、どちらかを怠ると衝突・接触事故につながります。

駐車場での事故は道路交通法が適用されない場合も

コインパーキング、ショッピングモールなど誰でも出入りできるような駐車場では道路交通法が適用されます。事故が起きたら、必ず警察に届け出るようにしましょう。

一方、個人所有の駐車場は、道路交通法が適用されません。もっとも、たとえ個人所有の駐車場であったとしても、事故が起きたら警察に連絡を入れた方がいいでしょう。また、当て逃げなどの被害を受けており、ドライブレコーダーの映像などで証拠が示せる場合は加害者に刑事上・民事上の責任が生じるので、警察に連絡を入れることで捜査してくれる可能性があります。

道路交通法が適用されないとどうなる?

道路交通法が適用されない場合は、裁判などで過失割合の争いが起きる可能性があります。
駐車場内の事故では車両と歩行者の双方に注意義務があるのですが、防犯カメラなどの映像がない限り、過失割合の判断が難しくなります。

当て逃げの場合に加害者の追跡が困難になる

後ほど再記述しますが交通事故として処理をされると、加害者に当て逃げをされてしまっても警察の捜査が入るので追跡可能です。
ただし、道路交通法が適用されず、さらに負傷者などもいない場合は加害者の追跡や損害賠償の請求が困難になるかもしれません。

駐車場での事故の場合、過失割合はどうなる?

駐車場内での事故では過失割合の算定が難しいケースが多くなっていますが、見通しの良さや防犯カメラの映像などによって過失割合が判断されます。
防犯カメラの場合は死角がある場合もあるので、ドライブレコーダーの映像が決定打となることもあるでしょう。
駐車場内の事故で、よくある過失割合は以下の通りです。

過失割合が0対10のケース

駐車場内で自分の車両が完全に静止しているときに車に接触された場合は0対10の過失割合となることがあります。

過失割合が20対80のケース

駐車区分に駐車中、通路を走ってきた車に接触された場合は、20対80の過失割合となることがあります。

過失割合が30対70のケース

駐車場内の通路を走行中、駐車区分から出てきた車に接触された場合は、30対70の過失割合となることがあります。

過失割合が50対50のケース

駐車場内の通路を走行中、出会い頭で衝突した場合は、50対50の過失割合となることがあります。

駐車場で事故を起こした場合の罰則

駐車場内で事故を起こした場合は、「罰則がある」ことを覚えておきましょう。

当て逃げ報告義務違反:3か月以下の懲役または5万円以下の罰金※
危険防止措置義務違反:1年以下の懲役または10万円以下の罰金※
ひき逃げ報告義務違反:3か月以下の懲役または5万円以下の罰金※
救護義務違反:10年以下の懲役または100万円以下の罰金※
過失運転致死傷:7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金

※誰でも出入りできるような駐車場内の場合

当て逃げの場合

誰でも出入りできるような駐車場内で車両とぶつかり逃げた場合は「当て逃げ」と判断されます。この場合、報告義務違反や危険防止措置義務違反に該当します。
また、被害者に損害が生じている場合は、加害者に対して損害賠償請求することができます。

ひき逃げの場合

駐車場内で人身事故を起こして逃げた場合は、道路交通法が適用されない個人所有の駐車場であっても「ひき逃げ」と判断されます。この場合は過失運転致死傷罪となり、道路交通法における報告義務違反、救護義務違反として有罪になります。
一般的な交通事故と比べても悪意があるとして重い罰則が問われるでしょう。

加害者が見つからない、過失割合に納得がいかないときは?

駐車場での事故で当て逃げやひき逃げをされてしまった場合、加害者が分かりません。これでは損害賠償請求先が分からないので、犯人を追跡する必要があります。
このように加害者がわからない場合の対処方法を、以下に2つ紹介します。

同時に過失割合に納得がいかない場合の対応方法でもあるので、参考にしてみてください。

防犯カメラの確認要請をする

基本的に防犯カメラの映像確認は警察が行うか、もしくは警察の許可がないとできません。ただ、個人所有の駐車場の場合は「当て逃げをされてしまったから見せてほしい」と頼めば、駐車場の所有者と共に確認させてもらえる場合もあります。

コインパーキングなど企業が運営しているような駐車場であれば、警察に届け出る必要があります。ご自身で確認するのは困難でも、警察に届け出ることで「駐車場内の防犯カメラ」や「コンビニのカメラ」などの調査が可能です。

弁護士に依頼する

事故が刑事事件となっていれば、警察の介入ができます。警察の捜査が入れば、加害者を断定できる可能性が高まるでしょう。

そこで防犯カメラなどの映像資料を提出できれば、加害者側へ過失を認めさせる有利な証拠となります。加害者との示談交渉が停滞している場合は、これらの証拠をもとに弁護士に相談しましょう。

まとめ

駐車場での事故では、一般的な交通事故と比べて異なる部分も多かったのではないでしょうか?
それでも負傷者がいる場合は、まず救護することを念頭におきましょう。

また、事故後に損害賠償請求を行う場合は、こういった違いを認識する必要があります。自分で対応しようとすると、相手の保険会社に上手くいいくるめられてしまうかもしれません。
判断の難しい駐車場の事故は、まず弁護士に相談してみてください。

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監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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