交通事故慰謝料の
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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
慰謝料の支払い基準は、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準と3種類あります。
弁護士基準は裁判基準ともいわれているため、最も高額になります。
対して自賠責基準は最も低額な基準ですが、場合によっては自賠責基準をもちいたり、その計算方法などを知っておく必要性もあるでしょう。
当記事では、慰謝料計算において「自賠責基準」に焦点を当てて解説しています。
入通院慰謝料に関する7日加算についても解説していますので、交通事故で入院や通院をされる方はぜひ参考にしてください。
目次
自賠責保険は、国の強制保険です。
その理由は被害者救済を目的とする点にあり、自賠責保険の支払いについても対人部分しか支払われません。
対して、任意保険は保険会社と加入者の「契約」にもとづいて加入するものです。
自賠責保険は最低限の保険であるため、任意保険の約款とは内容が違います。
この章では、自賠責保険と任意保険のちがいについて解説しておきましょう。
基本的に、任意保険の商品には示談交渉代行サービスがついています。
交通事故にあった当事者に代わり、完全な被害事故でなければ保険会社があいだに入って交渉するのがおきまりです。
自賠責保険には、そのようなサービスはありません。
自賠責保険の支払基準は法令で定められているので、示談交渉の余地はありません。
先述のとおり、自賠責保険は任意保険とちがい、契約者の意思にもとづく商品ではありません。
よって、賠償金額を自由に設定できるわけではありません。
任意保険であれば、対人補償や対物補償の金額を無制限で設定できますが、自賠責保険での支払い金額は以下のように決まっています。
損害の種類 | 金額 |
---|---|
傷害 | 120万円 |
後遺障害 | 4000万円(1級の場合) |
死亡 | 3000万円 |
自賠責保険の支払い金額は、どんなに被害者の損害が大きくても限度額を上回ることはありません。
さらに自賠責保険では、限度額だけでなくその「支払い基準」までも法令で規定されています。
任意保険が介入すると、交通事故の損害賠償金は純粋に過失割合にもとづいて支払われます。
つまり、100万円の損害に対して、被害者に過失が2割ある場合、20万円については加害者側に請求できないのです。
しかし自賠責保険においては、過失相殺がありません。
自賠責保険では、過失分の減額についても規定されています。
あくまでも被害者救済が目的であるため、被害者に相当の過失がなければ減額されない仕組みになっているのです。
具体的な数字は以下表のとおりですが、最大でも減額される割合は5割までとなり、7割未満の過失であれば減額されないようになっています。
被害者の過失 | 後遺障害/死亡 | 傷害 |
---|---|---|
7割~8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割~9割未満 | 3割減額 | 2割減額 |
9割~10割未満 | 5割減額 | 2割減額 |
任意保険においての対人補償は、約款で規定されています。
また任意保険の対人補償の内容は、自賠責保険よりも範囲が広くなっています。
(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。(中略)
自賠法3条
自賠責保険の主体が運行供用者とされているのに対し、任意保険では「被保険自動車の」所有・使用・管理に起因する者が主体となっています。
任意保険は車にかかっている保険です。
そのため、基本的にその車での事故を補償する点が特徴なので、自賠責保険とはそもそも考え方が違うのです。
また、任意保険の対人補償はあくまで自賠責保険の上積みですが、自賠責保険から支払いを受けられない場合は任意保険から全額カバーされるケースもあります。
たとえば自賠責保険の「運行供用者責任」に該当しない場合などです。
素因減額とは、被害者の心因的要因や既往症などの身体的要因を慰謝料額から減額することです。
自賠責保険はやはり性格上、そのような減額制度がありません。
具体的には、事故と損害の因果関係がよくわからない場合にだけ、減額をしようという考え方です。
このような減額制度を「因果関係不明の減額」といいますが、その場合に限って慰謝料金額が5割減額されます。
自賠責保険についてもう少し詳しく知りたい方は、『自賠責保険の過失割合|被害者に有利な制度を徹底解説!』も参考にしてください。
自賠責保険で入通院慰謝料を計算する場合、「7日加算」が適用されることがあります。
「7日加算」とは具体的に、通院期間に7日をプラスすることです。
この章では、そもそもの自賠責保険の入通院慰謝料計算方法から、7日加算を適用できるケースについてご説明しましょう。
自賠責保険で規定されている計算方法は以下のとおりです。
以下2つの計算方法のうち、日数の少ない方が採用される運用です。
自賠責基準の入通院慰謝料計算方法
※ 2020年3月31日までに起きた事故については1日あたり4,200円で計算
※ 治療期間とは入院期間+通院期間
※慰謝料の対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して決まります。
それでは上記を前提に、次章では7日加算についてご説明します。
7日加算は、診断書に記載の治療終了日が「治癒見込」「中止」「転医」または「継続」となっている場合に適用されます。
治癒見込 | 病状が治癒とまではいかないが、今後治癒すると見込まれること |
中止 | 治療が中止された状態のこと 治癒にはいたっておらず、症状固定された例などが代表的 |
転医 | 病院や医師を変更すること |
継続 | 今後も治療が必要だと診断されること てんかんや精神疾患の場合が代表的 |
治療終了日とは
自賠責から支払われる傷害部分は120万円が限度です。
よって7日加算されるといっても、あくまで120万円の限度額までであることに注意しましょう。
傷害部分の内訳は、治療関係費や入院・通院に対する慰謝料(入通院慰謝料)、休業損害などです。
いくら損害額が大きくなっても、120万円を超える分は自賠責保険からは支払われません。
ですので、自賠責保険特有の7日加算を検討できるのは、120万円の範囲内ということになります。
では実際に通院期間に7日加算した場合、かならず慰謝料は増額するのでしょうか?
実は、かならずしも増額するとは限りません。
その理由は、先ほどご説明した、自賠責基準での入通院慰謝料計算方法に関わってきます。
金額の少ない方が採用されるため、かならず増額された計算式が採用されるとはかぎらないのです。
以下例として、7日加算後に慰謝料が増額した場合をあげておきましょう。
7日加算増額例
通院期間:90日
入院期間:30日
実通院日数:60日 の場合
これまで、自賠責保険の慰謝料金額についてご説明しました。
この章では、自賠責保険の基準が上回る可能性についてご説明していきましょう。
最高裁判例は、自賠責保険の支払い基準について、以下のように判示しています。
自賠法の支払い基準とは、保険金等を支払うべきことを義務づけた規定であって、支払い基準は保険会社が訴訟外で保険金等を支払うべき場合に従うべき基準である。
最一小判平成18年3月30日
どういう意味かといいますと、保険会社は自賠責保険の支払い基準に従わなければいけないけれど、裁判所はその基準には拘束されないということです。
裁判所は、自賠責の支払い基準に拘束されませんので、自賠責の保険金額の範囲内で金額について判断できるといっているのです。
自賠責の保険金額範囲内で判断可能なので、支払われる保険金額の限度額(120万円・4000万円・3000万円)については裁判所も拘束されます。
つまり裁判になった際は、自賠責保険の支払い基準を上回ることもあるのです。
ただし、自賠責保険金の範囲内で判断が可能なので、保険金額を下回ることもあるでしょう。
弁護士基準で慰謝料をするには、裁判を起こすなどの方法もありますが、簡単な方法ですと、交通事故の示談交渉を弁護士に委任する方法があります。
たとえば加害者側が任意保険であっても、最も低額な自賠責基準を参考に慰謝料金額を提示してくることはよくある話です。
任意保険からの慰謝料支払い提示額が低い、など不安をお持ちの被害者は、迷わず弁護士相談を利用してみましょう。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了