駐車場でのバック事故!過失割合や慰謝料はどうなる?

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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

駐車場でバック中に他の自動車や歩行者、自転車などと接触してしまう事故は後を経ちません。
バックしている車に衝突されたら、お互いの過失割合はどのくらいになるのでしょうか?

実は交通事故の過失割合には基準があり、具体的な事故の状況によって大きく変わってきます。

今回は駐車場でバック中に起こった交通事故の過失割合や事故を避けるための対処方法について、弁護士がパターン別に解説します。

請求できる慰謝料や賠償金についてもご説明するので、駐車場内で事故に遭われた方はぜひ、参考にしてみてください。

駐車場内のバック事故とは

駐車場内のバック事故とは、駐車場内で一方の車両がバックしているときに後方の車両や歩行者などと衝突する交通事故です。

駐車場では、入庫する際や出庫する際にバック運転するケースが多々あります。

そんなとき、後方に注意を十分払っていなかったら、後ろにある車両や人に気づかずぶつかってしまうでしょう。

それが駐車場内のバック事故です。バック事故は「逆突事故」ともよばれるので、これを機会に知っておきましょう。

駐車場内で事故が発生した場合にも被害者がケガをしたり被害車両の車が壊れたりしたら、加害者は賠償金を払わねばなりません。

その際にはお互いの過失割合が問題になります。被害者側の過失割合を大きくされると相手に請求できる賠償金額が減らされてしまうので、賠償金の請求をするときには過失割合が非常に重要なポイントといえるでしょう。

駐車場でのバック事故の過失割合

駐車場内のバック事故では、加害者と被害者それぞれの過失割合がどのくらいになるのでしょうか。
駐車場でのバック事故に関する過失割合を紹介します。

なお、この記事で紹介する過失割合は、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにしています。

被害者が停車していた場合

バック事故での過失割合は、被害者が停車していたか徐行していたかによって異なります。

停車していた場合、加害車両が一方的に衝突してきたといえるので、被害者に過失はありません。

加害者:被害者=100%:0%となります。

相手がバックして出庫しようとしていた場合

相手がバックして出庫しようとしているときに、こちらが通路を走行しており接触してしまったら、出庫しようとしていたバック車両の過失割合が高くなります。

基本の過失割合は通路走行車両:バック車両=30%:70%です。

修正要素について

ただし、基本の過失割合は、個別の事故ごとの事情により修正される可能性があり、必ずしも30%:70%になるとは限りません。

過失割合を修正する事情を「修正要素」といいます。

通路走行車両:バック車両=30%:70%の修正要素は以下の通りです。基本の過失割合に対して、修正要素を加算したり減算したりしてください。

通路走行車両バック車両
基本3070
バック車両の著しい過失-10+10
バック車両の重過失 -20+20
通路走行車両の著しい過失+10-10
通路走行車両の重過失+20-20
  • バック車両の著しい過失
    バックしていた車両に「著しい過失」があると、バック車両の過失割合が10%程度加算されます。著しい過失とは、通常の想定を大きく上回る不注意のことです。たとえば、著しく不適切なハンドルブレーキ操作、スマホやカーナビをみながらの運転、著しい脇見運転、酒気帯び運転などが該当すると考えましょう。
  • バック車両の重過失
    バックしていた車両に「重過失」があると、バック車両の過失割合が20%程度加算されます。重過失とは、故意とも同視できるような悪質な過失のことです。たとえば、居眠り運転、酩酊状態での運転(酒酔い運転)、薬物摂取により正常な運転ができない状態だった、無免許運転などが該当すると考えましょう。
  • 通路走行車両の著しい過失
    通路走行車両に「著しい過失」があると、通路走行車両の過失割合が10%程度加算されます。
  • 通路走行車両の重過失
    通路走行車両に酒酔い運転や無免許運転などの重過失があると、通路走行車両の過失割合が20%程度加算されます。

相手がバックして入庫しようとしていた場合

相手がバックして入庫しようとしているときに、こちらが通路を走行しており前方不注視で接触してしまったら、通路を走行していた車両の過失割合が高くなります。

基本の過失割合は通路走行車両:バック車両=80%:20%です。

修正要素について

ただし、基本の過失割合は、個別の事故ごとの事情により修正される可能性があり、必ずしも80%:20%になるとは限りません。

通路走行車両:バック車両=80%:20%の修正要素は以下の通りです。基本の過失割合に対して、修正要素を加算したり減算したりしてください。

通路走行車両バック車両
基本8020
バック車両の著しい過失-10+10
バック車両の重過失 -20+20
通路走行車両の徐行なし+10-10
通路走行車両のその他の著しい過失+10-10
通路走行車両の重過失+20-20
  • バック車両の著しい過失
    バックしていた車両に「著しい過失」があると、バック車両の過失割合が10%程度加算されます。
  • バック車両の重過失
    バックしていた車両に「重過失」があると、バック車両の過失割合が20%程度加算されます。
  • 通路走行車両が徐行していなかった
    通路走行車両が徐行していなかった場合、通路走行車両の過失割合が10%程度加算されます。
  • 通路走行車両の著しい過失
    通路走行車両に酒気帯び運転などの著しい過失があると、通路走行車両の過失割合が10%程度加算されます。
  • 通路走行車両の重過失
    通路走行車両に酒酔い運転や無免許運転などの重過失があると、通路走行車両の過失割合が20%程度加算されます。

被害者が歩行者や自転車の場合

駐車場では、車から降りて歩いている歩行者や、場合によっては自転車と衝突してしまうケースもあります。

相手が歩行者や自転車の場合には、基本的に車両側の過失割合が大きくなると考えましょう。歩行者や自転車が飛び出してきたとしても、車側の過失割合が高くなります。

バックする車両が区画内の歩行者に衝突した場合の基本の過失割合は、加害車両:歩行者=90%:10%程度です。

歩行者が児童や幼児、障害者や高齢者などの場合、自動車の過失割合がさらに加算されるので、100%加害者の過失となる可能性もあります。

駐車場内バック事故の過失割合でよくあるトラブル

駐車場内でバック事故が起こると、以下のようなトラブルが発生しやすいので注意してください。

相手が嘘をつく

バック事故を起こした加害者は、後に嘘をつき始めるケースが多々あります。

当初は「まったく後ろをみていなかった」などと過失を認めていたのに、後になると「後ろの車両が飛び出してきた」「被害車両が全然見えなかった」などと言い出すパターンが典型といえるでしょう。

嘘をつかれないためには、事故の現場で相手の言い分をしっかり聞いておくこと、後に状況を証明できるようにドライブレコーダーを設置しておくことなどが重要です。

駐車場に監視カメラがついている場合、カメラの画像を分析することによって相手の嘘を暴ける可能性もあります。

監視カメラは駐車場の所有者や管理会社が管理しているので、必要に応じて開示を求めるとよいでしょう。

被害者の責任にされる

バック事故の加害者は、事故を被害者のせいにしてくるケースが非常に多いので注意しましょう。

たとえば「被害者がクラクションを鳴らさなかったのが悪い」「被害者が徐行せずに前進してきたので事故を避けられなかった」「暗いのに被害者がヘッドライトをつけていなかったのが悪い」など。

しかし、クラクションを鳴らさなかったからといって必ずしも被害者の過失割合が上がるとは限りません。徐行していたのであれば、監視カメラやドライブレコーダーによって真実を証明しましょう。

駐車場でのバック事故を避けるための対処方法

駐車場でのバック事故を避けるため、以下のように対処してみてください。

徐行運転をする

駐車場内では徐行が必須です。出庫中の車がバックで出てくる可能性もありますし、歩行者や自転車が飛び出してくる危険性も考えられます。

徐行していなかったら被害者であっても過失が高いと判断され、過失割合を加算されてしまうでしょう。駐車場内では必ず徐行を心がけてください。

ヘッドライトをつける

駐車場内が暗い場合、ヘッドライトを付けましょう。

ヘッドライトは、自車が周囲の状況を把握するためだけのものではありません。相手から自車が見えやすくなる意味合いもあります。

ヘッドライトをつけていれば、前方車両が自車に気づきやすいので無理にバックしてくる危険性が低下するでしょう。

クラクションは遠慮なくならす

相手が一方的にバックしてきたとき、必ずしもクラクションを鳴らす義務はありません。ただクラクションを鳴らすと相手が気づいて事故を避けられる可能性が高まります。

相手がバックで近づいてきたら、遠慮なくクラクションを鳴らしましょう。「相手の気分を害するかもしれない」などと躊躇する必要はありません。

ドライブレコーダーをつける

駐車場での交通事故に備えるには、ドライブレコーダーが必須ともいえます。

狭い空間であり目撃者も存在しないケースが多く、事故の状況を正確に証明するのが難しくなりがちだからです。

ドライブレコーダーで事故の状況を撮影していれば、後に相手が嘘をつき始めたときにも現実の状況を立証できるので、必ず設置しましょう。

今はオンラインでも簡単にドライブレコーダーの購入ができますし、最近は安価なものもたくさん発売されているので入手しやすいです。

駐車場内のバック事故で請求できる賠償金や慰謝料は?

駐車場内で相手がバックしてきて衝突事故が起こってしまったら、どのくらいの賠償金を請求できるのでしょうか?

物損

交通事故で請求できる賠償金は、物損事故と人身事故で異なります。

物損事故の場合、賠償金の費目は主に車の修理費用です。

ただし、修理費用が車の時価を上回る場合には、時価が限度となるので注意しましょう。

車を買い替える場合、買い替えにかかる諸費用も請求できる可能性があります。

被害車両が高級車の場合には車の評価損害を請求できるケースもありますが、保険会社へ評価損害を請求しても拒否される可能性が高いのが現実。多くの場合には訴訟を起こさねばなりません。

物損への補償について疑問があれば弁護士へ相談しましょう。

人身損害

駐車場内のバック事故が人身事故の場合、人身損害の賠償を請求できます。具体的には以下のような損害が発生する可能性があるので、確認しておきましょう。

  • 治療関係費
    病院や薬局へ支払う治療費、入院雑費、看護費用などを請求できます。
  • 交通費
    通院にかかった交通費や宿泊費用などを請求できます。
  • 休業損害
    治療のために仕事を休んだ場合には、日数分の休業損害を請求できます。
  • 慰謝料
    ケガをしたら、治療にかかった日数に応じて入通院慰謝料(傷害慰謝料)を請求できます。
  • 介護費用
    介護が必要になった場合、介護費用を請求できます。
  • 器具や装具の費用
    ケガの影響で義眼や義足、コンタクトレンズやメガネなどの器具、装具等必要になったらそういった費用も請求できます。
  • 後遺障害逸失利益
    後遺障害が残ったら、将来の減収分への補償として後遺傷害逸失利益を請求できます。
  • 後遺障害慰謝料
    後遺障害が残ったら、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を請求できます。

被害者が不幸にも死亡してしまった場合、遺族が死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬儀費用を請求できる可能性があります。

駐車場内のバック事故でお困りなら弁護士へ相談を

駐車場内のバック事故に遭って相手が嘘をついたり保険会社の言い分に納得できなかったりして困ってしまったら、弁護士へ相談しましょう。

弁護士であれば資料を集めたり分析したりして、事故の正確な状況を立証できる可能性があります。

また、弁護士に示談交渉を依頼すると、保険会社基準より高額な弁護士基準が適用されるので請求できる慰謝料の金額が増額されるメリットも受けられます。

アトム法律事務所でも交通事故被害者の救済へ積極的に取り組んでいますので、お気軽にご相談ください。

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監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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