赤本と後遺障害慰謝料の関係

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赤本と後遺障害慰謝料の関係

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故の後遺障害慰謝料について、赤本が参考になるらしいです。

赤本と後遺障害慰謝料の関係について、調査してみました。

赤本ってよく聞くけど何のこと!?

先生、赤い本ってそんなに交通事故では役に立つ本なんですか?

赤い本は、ぼくもよく利用しているよ。慰謝料の相場を確認するためには必須の本だね。

慰謝料の調査にも役立ちそうですね。本屋に買いに行ってみようかな。

交通事故の処理にあたって、弁護士や裁判官がよく利用するものとして、赤本(赤い本)があります。表面のカバー全体が赤色のため、通称でこのように呼ばれているそうです。

赤本には、交通事故の損害項目ごとに裁判所基準での金額・相場が掲載されています。解説部分は非常にシンプルですが、裁判例の紹介が多いことが特徴だそうです。

赤本は、東京地裁の交通部が毎年1回それまでの裁判例の傾向をまとめて出版されているので、東京地裁をはじめとする全国の裁判所での判決の基準として位置づけられていて、実務上はとても重要な書籍とのことです。

弁護士さんの感覚としても、ほとんどの裁判官が赤本の基準で判決を書いていて、特別な事情がない限り、赤本の基準がそのまま判決で損害額として記載されることも多いそうです。

<赤い本の特徴>

正式名称

民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準(日弁連交通事故相談センター)

内容

慰謝料等の損害額の相場が明確に示されている。解説は簡潔で、裁判例の掲載が多い。

発行頻度

年1回。東京地裁の交通部が裁判例の傾向を踏まえてまとめる。

弁護士基準との関係

赤本の基準を採用。

裁判所の判決との関係

特別な事情のない限り、赤本の基準がそのまま判決中で損害額として記載されることが多い。

赤本以外にも種類がある!?

赤本って、交通事故分野ではそんなに重要な本なんですね!

実は赤本以外にも、青本、緑本、黄色本なんかがあるんだよ。

えーっ!どれから順に読めばいいですか?

弁護士さんによると、交通事故分野の書籍の中では、赤い本が最もポピュラーな本だけれど、それ以外にも、青、緑、黄色の本があるらしいです。

緑本は大阪地裁において、黄色本は名古屋地裁において、交通事故の損害賠償基準をまとめたものなので、その他の地域ではあまり参考にならないそうです。

一方、青い本は、全国的にもよく利用されていますが、慰謝料などの基準が幅をもって掲載されており、基準の上限や下限の金額が裁判所で認められることは少ないとのことです。

赤い本最も全国的によく利用されており、裁判での慰謝料の相場を示すものとして適任だそうです。

(まとめ表)

通称

適用地域

概要

赤い本

東京・全国の裁判所 東京地裁交通部が毎年の裁判例の傾向をまとめたもの。解説は簡潔で、裁判例の掲載が多い。

青い本

全国

相場に幅をもたせた記載が特徴的。解説が詳しめであり参考になる。

緑本

大阪

大阪の地域限定で賠償基準を示したもの

黄色本

名古屋

名古屋の地域限定で賠償基準を示したもの

赤本と後遺障害慰謝料の相場の関係は!?

先生!赤本には、後遺障害慰謝料の相場がそのまま掲載されてるんですか?

実際には、赤本の基準が、慰謝料の相場と同じ基準ってことになるだろうね。

ただの本が相場を作ってるなんて信じられないです!

わたしが、よく弁護士さんから聞いて慰謝料の相場として表をつけるときは、大抵は赤い本に掲載されている金額を紹介しています。

今回は、もう一つの全国基準である青い本に掲載されている慰謝料基準と対比させてみたいと思います。

下の表にあるとおり、青い本での慰謝料基準は、金額の上限と下限が決められていて、後遺障害の内容や被害者の個別事情に応じてその範囲内で金額を調整するという方法をとっています。

より裁判官の思考に則しているみたいですが、やはり裁判では、裁判官は赤い本のほうをよく利用しているようです。

慰謝料相場はどちらを採用してもいいのですが、気を付けるべきことは、被害者本人だけで保険会社と交渉しても、下の表の基準を大幅に下回る慰謝料しか払ってもらえないということです。

弁護士さんに依頼してはじめて、慰謝料が相場まで大幅にアップして、十分な補償を受けることができるってことを覚えておく必要がありますね。

(解説)

後遺障害慰謝料(万円)

等級

赤い本

青い本

等級

赤い本

青い本

1級

2800

2700~3100

8級

830

750~870

2級

2370

2300~2700

9級

690

600~700

3級

1990

1800~2200

10級

550

480~570

4級

1670

1500~1800

11級

420

360~430

5級

1400

1300~1500

12級

290

250~300

6級

1180

1100~1300

13級

180

160~190

7級

1000

900~1100

14級

110

90~120

後遺障害慰謝料(万円)

等級

赤い本

青い本

1級

2800

2700~3100

2級

2370

2300~2700

3級

1990

1800~2200

4級

1670

1500~1800

5級

1400

1300~1500

6級

1180

1100~1300

7級

1000

900~1100

8級

830

750~870

9級

690

600~700

10級

550

480~570

11級

420

360~430

12級

290

250~300

13級

180

160~190

14級

110

90~120

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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