バイクのすり抜け事故における過失割合|違法性や示談に納得できないときの対処法

更新日:

バイクのすり抜け事故|示談に納得できない!

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

バイクの特徴的な事故には、すり抜けによるものがあります。その際トラブルになりやすいのが過失割合です。示談では、相手方から納得のいかない過失割合を提示されることも珍しくありません。

納得いかないまま提示を受けた過失割合に応じてしまうと、十分な賠償金を受けとれないリスクが生じてしまいます。

そこで、今回はバイクの事故の中でも特にすり抜けを題材に、バイク事故の過失割合に関して解説していきます。

バイクのすり抜けは違反になる?

一般的に、すり抜けとは「バイクなどの二輪車が車と車の隙間を走行」するような行為をいいます。

具体的な状況はその時々によって異なりますが、止まっている車の間をすり抜けることもあれば、渋滞などで低速で走行中の車の間をすり抜けることもあるでしょう。また、追い抜く方向が車の左側なのか右側なのかといった違いもあるでしょう。

そこで問題になるのが、こういったすり抜け行為が違法かどうかということです。すり抜けそのものは危険を伴う行為ではありますが、実のところ法律上はグレーゾーンとされています。つまり、すり抜け行為が必ずしも違反行為であるとはいえません。

すり抜けの状況によっては違反になることもある

違反行為として扱われるすり抜けは、すり抜けの状況次第で変わります。というのも、すり抜け行為が道路交通法上の「追い越し」または「追い抜き」と認められる場合に違反として扱われることになるのです。

追い越しとは、車線変更を伴って前の車の側方を通過して、前方に出たりそのまま直進したりすることです。
これに対し、追い抜きは車線変更を伴わず前の車の側方を通過して、前方に出たりそのまま直進したりすることです。

多くのすり抜けは、道路交通法上の「追い抜き」と評価されるケースが多いです。
仮に、道路交通法上の「追い越し」と評価される場合には、曲がり角や急な下り坂・トンネル・交差点などでのすり抜けは違反行為ということになります。

要は、すり抜けの定義が曖昧なため、すり抜けの状況に応じて道路交通法上の「追い抜き」か「追い越し」の区別に当てはめ、それぞれの行為が許される状況なのかどうかを判断する必要があるということです。

なぜ、すり抜け事故はよく起こる?

バイクが絡む事故にも色々あります。追い越しの際に接触してしまう事故や巻き込み事故、出会い頭に起こる事故などです。

バイクは車に比べて車体が小さいという特徴があるため、死角が原因となって事故が発生しやすいのです。また、車の通ることができない小さな隙間でもバイクなら入ることができるため、すり抜けによる事故もよく起こるのです。

たとえば、前を走る車が交差点で左折するのと同時に、すり抜けをしてきたバイクと接触することがあります。バイクの運転者はちょっとした接触でも大けがに至りやすいため注意が必要ですし、車を運転する者としても、少しの不注意で多額の賠償金を支払うことになりかねないためすり抜け等を予測しつつ運転することが大切です。

すり抜け事故と過失割合の関係

過失割合とは?

過失割合とは、「事故原因となった不注意等に対する当事者の責任割合」を意味します。

たとえば、周囲をよく確認していなかったバイクが巻き込み事故に遭った場合には、相手方が後方を確認していなかったとしてもその相手方のみを責めることはできません。そのため過失割合を3:7や4:6などとし、バイクと車の運転者双方に不注意があったとして、過失割合に応じてそれぞれ一定の責任を負うことになるのです。

事故が起こったときに過失割合が重要な扱いとなるのは、賠償金の算定において影響することになるからです。たとえば、自分の過失割合が3割ついたとして、損害額が100万円だった場合、事故相手には70万円しか請求することができません。
このように、過失割合に応じて賠償金の金額が調整されることになるので、過失割合の決定は慎重にならねばなりません。

過失割合の決め方

過失割合は、基本的に当事者間の示談による話し合いで決めることが多いです。相手方が任意保険会社に加入していれば、任意保険会社の担当者と話し合って決めることになるでしょう。

バイクと車の事故の場合には「単車修正」が入り、ややバイク側が有利になる傾向があります。バイク側に傷害・死亡といった大きな損害が生じやすいことがその理由とされています。
もっとも、 バイク側が有利になる傾向があるというだけで、どんな事故でも必ずバイク側が有利になるという意味ではありません。

示談で決着がつかず、裁判にまでもつれ込んだ場合には、裁判所が過去の事例を参考にしてより客観的な判断のもと過失割合を決定することになります。

すり抜けの過失割合の事例

すり抜けが原因で起こる事故の過失割合をいくつか紹介します。

渋滞脇をすり抜けて出てきたバイクと右折車との事故

このケースの基本的の過失割合は、バイク:車=3:7です。

しかし、両者とも、どれほど互いの存在を予測できる状況であったのかということが重要視され、その状況によって過失割合は変動するでしょう。

たとえば、車が周囲に配慮しつつゆっくりと右折して侵入したのに、バイクがそのままの速度で侵入してきたのであればバイクの著しい前方不注意で1~2割程度の過失がプラスされることになるでしょう。

仮に、車が駐車場やガソリンスタンドなどに立ち寄るために、渋滞の車両間を抜けて交差点以外の場所で右折してきたような場合、車に0.5~1割程度の過失がプラスされることになるのでバイク側に有利な割合になることが予想されます。

すり抜けをしていたバイクが左折する車に巻き込まれる事故

このケースの基本的の過失割合は、バイク:車=2:8です。

しかし、バイクの速度違反などがあればバイクに1~2割程度の過失がプラスされて、バイク:車=3:7や バイク:車= 4:6になることも十分にあり得ます。

逆に、車が大回り左折・合図遅れ・直近左折等をしていたのであれば バイク:車= 1:9になることもあるでしょう。

提示された過失割合に納得ができない場合はどうする?

事故後はまず、当事者間での解決を図るために示談を行うのが一般的です。示談では相手方から過失割合に関して提示を受けることがありますが、その内容に納得できないこともあるでしょう。

ここで覚えておきたいのは、相手が提示してきた内容にすべて従う必要はないということです。示談は互いに納得がいく場合にのみ成立させれば良いからです。過失割合に納得いかないのにそのまま受け入れてしまうと、十分な賠償金を得ることができません。

示談交渉を通じて、適切な過失割合となるよう主張していくことが大切です。示談交渉は、法律上の問題も絡むため、弁護士に依頼するとよいでしょう。

事故状況を丁寧に反映した過失割合かどうか検討する

ここまでで説明した通り、同じ「すり抜け」と呼ばれる行為をしたとしても、過失割合が常に一定になるわけではありません。目安は存在するものの、事故の具体的事情によって過失割合は異なり、基本的に話し合いで決めていくものです。

示談交渉の相手方が任意保険会社である場合、「このケースだと過失割合は7対3になります。」などと一方的に通知してくることもあるので注意するようにしましょう。というのも、任意保険会社は社内のマニュアルに沿って定型的な過失割合の算定しかしないことも多く、事故の状況を丁寧に反映した過失割合になっていない可能性があります。

そこで、相手方が提示してきた過失割合に納得できない場合には、できるだけ正しい過失が認められるように働きかけることが大切です。

正しい過失割合を導き出すためには、事故の状況が客観的にわかる資料が必要です。たとえば、ドライブレコーダーや事故現場の周辺にある監視カメラ、警察などの捜査機関が作成する交通事故に関する交通事故証明書・実況見分調書・供述調書といった資料があげられます。

また、事故にあったご自身が保険会社に提出するために作成する事故発生状況報告書なども資料として扱われるでしょう。事故発生状況報告書は、事故が起きた場所・日時・天候といった基本的な情報はもちろん、交通状況・それぞれの車の速度・信号の有無・その他様々な状況を被害者が記載します。
重要な書類となるので、嘘偽りなく正確な事実をもとに作成するようにしましょう。

すり抜け事故は弁護士に相談

過失割合に納得ができない場合、正しい過失割合となるよう相手に主張していかなければなりません。しかし、それは専門家以外の方にとって容易なことではありません。

そこで、示談交渉をする場合には弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に示談交渉を依頼すれば、法律の知識をもって示談交渉を進めてくれるので、自身の主張内容が実現されやすくなります。

また、訴訟を要することになったときでもサポートしてくれるなど、弁護士に依頼することのメリットは多岐に渡ります。

まとめ

法律上、グレーゾーンといえるバイクのすり抜けで事故が起こると、過失割合に関して相手方とトラブルになりやすいです。

事故後、スムーズに交通事故の問題を解決するためには、弁護士に相談することをおすすめします。示談交渉に限らず、様々な問題に対してサポートを受けられるでしょう。

シェアする

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

あわせて読みたい記事