駐車場内の事故は警察を呼ばなくていい?過失割合や正しい対処方法を解説

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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

駐車場内で事故が発生すると「道路交通法が適用されない」「警察を呼ばなくていい」などといわれることがあります。実際に警察を呼んでも「ここは駐車場だから対応できない」といわれてしまい、被害者が困惑するケースが少なくありません。

しかし、駐車場内の事故でも道路交通法が適用される可能性はありますし、被害者の立場になれば相手に損害賠償請求もできるので、正しい知識を持っておきましょう。

今回は駐車場内の交通事故における対処方法や注意点、過失割合などを弁護士が解説します。
駐車場で事故にあって困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

駐車場内の事故と道路交通法の関係

「駐車場内では交通事故にならない」「警察を呼ばなくてよい」などといわれるケースが少なくありません。
本当に駐車場内の事故では警察を呼ばなくてよいのでしょうか?

まずは駐車場内の交通事故と「道路交通法」の関係をみていきましょう。

駐車場内の事故は「交通事故」にならない?

事故が駐車場内で発生すると、なぜ交通事故にならないといわれるのでしょうか?

それは駐車場内の交通事故の中には「道路交通法」が適用されないケースがあるからです。

道路交通法は、「道路」について以下のような定義をしています。

道路 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項に規定する道路、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。

道路交通法2条1項

道路交通法によると、「一般交通の用に供する場所」でなければ「道路」にはなりません。純然たる私有地で一般の立入が禁止される道には道路交通法が適用されないのです。

たとえば、駐車場が個人の所有地で一般車両による駐車や出入りが禁止されていたら基本的に道路交通法は適用されません。

駐車場内の事故でも道路交通法が適用されるケース

ただし、駐車場内の事故だからといって、すべてが道路交通法の適用外になるとは限りません。
私有地であっても一般交通の用に供されていたら「道路」となります。

たとえば、誰でも利用できるコインパーキング、大規模ショッピングセンターや飲食店の駐車場などは、一般に出入りが自由な開かれた場所の場合です。こうした駐車場は「道路」となり、道路交通法が適用される可能性が高いと考えましょう。

駐車場内の事故でも警察を呼ぶ必要がある?

駐車場内で事故が発生すると、加害者が「駐車場内の事故は警察を呼ばなくていい」と言ってくる可能性があります。

しかし、これは必ずしも正しくないので注意しなければなりません。

道路交通法が適用される場合には報告義務がある

事故が発生したときに警察を呼ばねばならないと定めているのは、道路交通法です。
駐車場内の事故であっても、一般車両の横行があって道路交通法が適用される場合、警察を呼ばねばなりません

事故を警察に報告しないと「報告義務違反(道路交通法72条1項後段)」となり、刑罰が適用される可能性もあるので必ず通報しましょう

人身事故は報告しなければならない

駐車場内の事故で人が負傷すると「人身事故」になります。

人身事故の加害者の責任は道路交通法違反だけではすまされません。「過失運転致死傷罪」や「危険運転致死傷罪」という刑事責任を問われる可能性があります。

そこで、道路交通法が適用されるかどうかに関係なく、人身事故が発生したら警察へ報告すべきです。

駐車場内の事故と損害賠償、過失割合

駐車場内で事故にあったら、加害者へ損害賠償請求ができます。

道路交通法が適用されるかどうかと損害賠償には関係がありません。被害者の車に傷をつけたり怪我をさせたりした以上、加害者は被害者へ賠償金を払う義務を負います。

加害者が任意保険に加入している場合には、保険も適用されるので安心しましょう。

ただし、私有地の駐車場事故などで警察が介入しない場合、事故証明書が発行されません。相手の連絡先や加入している保険会社名などの情報は、事故現場で集めておく必要があります。

聞き逃したまま別れてしまったら、加害者を特定できないまま損害賠償請求できなくなってしまう可能性もあるので、注意してください。

駐車場内の事故と過失割合

駐車場内の事故では、被害者と加害者の過失割合はどのくらいの割合になるのでしょうか?

出会い頭の接触事故

大きめの駐車場内には交差点があるケースも少なくありません。交差点で出会い頭の交通事故が発生すると、お互いの過失割合は50%:50%となります。

通路を走る車と出庫しようとする車の接触事故

駐車場内で通路を走行する車と駐車区画から出庫しようとしている車が接触した場合、基本の過失割合は通路走行車両:出庫車両=30%:70%となります。

駐車区画から出ようとする場合には、通路を走行している車よりも簡単に周囲を確認して危険を避けやすいからです。

バックする車両と前進する車両の接触事故

駐車区画内にバックして入庫しようとしている車と通路を走行している車が接触した場合、基本の過失割合は入庫車両:通路走行車両=20%:80%となります。

通路を走行している以上、前方に注意を払っていればバックする車両の存在に気づき、事故を避けられたはずと考えられるからです。

バックして入庫する車両と歩行者の接触事故

車両が駐車区画内へむけてバックして入庫しようとするとき、後ろに歩行者がいてひいてしまうパターンの事故があります。

この場合の基本の過失割合は車両:歩行者=90%:10%となります。

歩行者が児童、幼児、高齢者や障害者だった場合などには車両側の注意義務が高まるので、過失割合がさらに上がると考えましょう。

通路上の歩行者と車両の接触事故

通路上の歩行者と接触してしまった場合でも、基本的に車両側の過失割合が高くなると考えましょう。基本の過失割合は歩行者:車両=10%:90%となります。

ただし、歩行者が急に飛び出した場合には歩行者側の過失割合が10%程度、加算される可能性があります。

駐車場内の事故は、加害者以外の人に賠償請求できる可能性がある

駐車場内で交通事故が発生すると、相手車両のドライバー以外の人へ賠償金を請求できる可能性があります。その相手は「駐車場の管理者や所有者」となります。

駐車場の管理方法に過失があれば、管理会社に責任を問える可能性がありますし、管理会社に過失がなくても所有者には「土地工作物責任」という責任が発生します(民法717条)。

たとえば、お店の駐車場で事故が発生したら、店に賠償金を請求できる可能性があると考えてください。加害者本人が賠償金の支払いに応じない場合や資力がない場合などには、管理会社やお店などへの請求も検討してみましょう。

管理会社や店は通常損害保険に加入しているので、スムーズに補償を受けられる可能性があります。

駐車場内で交通事故にあったときの対処方法

駐車場内で交通事故にあってしまったら、以下のように対応を進めましょう。

怪我人の救護

もしも怪我人が発生していたら、必ず救護しましょう。

救護活動をしなければ、道路交通法上の救護義務違反となり、厳しい処罰を受ける可能性があります(道路交通法72条1項前段)。

相手の方から衝突してきた場合や歩行者が勝手に飛び出してきた場合でも、救護義務は発生するので放置してはいけません。

危険の除去

事故にあったら、現場の危険を除去する義務が及びます。

周辺にちらばったものを片付けたり、他車の進行を妨害しないように車を脇に寄せたりして二次被害を防ぎましょう。

警察へ報告

駐車場内の事故であっても道路交通法が適用されるケースは多々あります。

そういったケースでは、必ず警察に報告しなければなりません。人身事故の場合でも警察への通報が必要です。

現場の保存

駐車場内で交通事故が発生すると、後に示談交渉をするときに過失割合についての争いが発生しやすい傾向があります。被害者と加害者の言い分が食い違い、トラブルになってしまうパターンです。

そんなとき、自分の主張内容を証明する証拠がないと、適当に「50%ずつ」などにされてしまう可能性もあるので注意しましょう。

事故が起こったら、その場で現場状況の証拠を保存すべきです。写真撮影をしたりメモをとったりして、後からでもどういった状況だったかわかるように対応しましょう。

相手との連絡先交換

駐車場内で事故にあったら、後に加害者や加害者の加入する保険会社へ賠償金の請求をしなければなりません。特に警察が介入しない場合、加害者の連絡先などは自分で確認する必要があります。

必ず事故現場で加害者の氏名や住所、連絡先と加入している保険会社名を確認しましょう。

保険会社へ連絡

警察による実況見分などが終了し、落ち着いたら自分の加入している保険会社に連絡を入れましょう。

駐車場内の事故であっても任意保険は使えます。相手との示談交渉にも対応してもらえますし、人身傷害補償保険などから保険金を受け取れるケースもあります。

連絡をしないと保険会社は対応してくれないので、早めに通知しましょう。

病院へ行く

事故にあうと、負傷する可能性があります。交通事故では、現場では痛みを感じなくても実は怪我をしているケースが少なくありません。

自覚症状がなくても、事故対応が済んだら早めに病院を受診しておきましょう。レントゲン撮影やMRI撮影などを行い、異常がないか確かめてください。

事故後1日、2日が経過してから症状を自覚した場合、早めに病院へいくようお勧めします。

駐車場内の事故にあったら弁護士へ相談を

駐車場内で事故にあったら、「交通事故にならない」などと言われて困惑してしまう方が少なくありません。しかし、相手の言い分が必ず正しいとは限らないので注意しましょう。

また、相手が保険会社の場合、自分で交渉をすると保険会社基準を適用されて慰謝料額を減額されるケースが少なくありません。そんなとき、弁護士に依頼すると法的基準が適用されて慰謝料額が大きくアップするものです。駐車場内事故で対応に迷ったら、早めに弁護士に相談してみてください。

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監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点

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