交通事故慰謝料の
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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
当記事では、交通事故で被害者が請求できる慰謝料について解説しています。
そもそも慰謝料とはどのような根拠で請求可能なのでしょうか。
そのような根本的な疑問から、慰謝料の金額についてもきちんと順を追って説明していきます。
慰謝料は基本的に、簡単な表をもちいて理解が可能です。
計算方法も載せていますので、交通事故で怪我を負った被害者の方はぜひ参考にしてください。
目次
交通事故の慰謝料を請求できる被害者とは、どのような人なのでしょうか。
交通事故慰謝料は、交通事故により精神的苦痛や不快感を得た場合に、加害者側に請求するものです。
根拠条文は以下です。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
民法710条
(近親者に対する損害の賠償)
第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
民法711条
まずは法律上の根拠にもとづく請求となりますので、違法性が認められることが重要です。
また、請求できる人物を、被害者本人のみでなく配偶者や父母、子にまで認めていることがわかります。
肝心な慰謝料の金額決定はどのようにするのでしょうか。
まず、金額の決定は当事者意思が大原則です。
通常は次にご紹介する「3つの計算基準の説明」でご説明する基準にそって算定しますが、慰謝料の金額を決定する示談交渉では、なによりも当事者の意思が勝るのです。
つまり、示談交渉が面倒だからといって加害者側が提示する金額に一度納得してしまえば、原則撤回ができません。
加害者側の提示とは、たとえば以下が考えられます。
慰謝料の金額が決定するのは、すべての治療が終了してからです。
後先考えず、提示の慰謝料額にサインしてしまわないよう注意が必要です。
慰謝料の金額を算定する計算基準についてご説明します。
自賠責保険の基準による慰謝料算定方法です。
自賠責保険は強制保険のため、支払い基準についてや名目などは、すべて自賠法令に制定されています。
そのため、金額は基本的に固定されており、かつその額は最低基準のものとなります。
通常、この基準で算定された金額を上回った部分について、別途請求していくことが多いです。
任意保険が各自で設定している基準です。
基準は会社によるもので、一般的に非公開です。
かつては旧任意保険基準が参考にされていましたが、現在もその慣行にならっているともいわれています。
自賠責基準よりすこし高く設定されていることが多いでしょう。
過去の裁判例をもとに、弁護士会が設定している基準です。
民事交通事故訴訟「損害賠償額算定基準」(通称:赤本)にも掲載されており、最も高額算定されます。
弁護士が保険会社と示談交渉する際や、交通事故訴訟になった場合に採用します。
慰謝料計算する際に、弁護士がもちいる弁護士基準についてはおわかりいただけたかと思います。
つぎに、その基準が書かれている赤本についてご説明します。
赤本(赤い本)の正式名称については先述のとおりですが、その基準はおもに東京を中心に扱われているものです。
しかし、東京限定で採用しているわけではなく、大阪の実務でも扱われることがあり、最もスタンダードな基準について書かれているものといえるでしょう。
慰謝料算定には青本と呼ばれる「交通事故損害額算定基準」も使われていますが、地方での実務で用いられることが多いとされています。
赤い本と比較して微妙な差がありますが、実際は事故状況により、赤本と青本を駆使して慰謝料請求を検討するケースも多いでしょう。
実際の慰謝料金額をみてみましょう。
慰謝料は赤本(弁護士基準)の場合、簡単な表でおよその金額を算定することが可能です。
もちろん具体的な請求金額と異なる場合もありますが、正確な計算方法を知ることにより、すくなくとも他の基準に比べ、高額請求が可能であることがおわかりいただけるかと思います。
弁護士基準に満たない慰謝料額については、弁護士基準で再計算して加害者に請求できる場合があります。
保険会社との示談交渉中の被害者は、どれくらいの慰謝料額引き上げが可能か弁護士に相談した方がいいでしょう。
交通事故により、入院や通院を強いられたことについて請求できる慰謝料です。
怪我をしたことによる肉体的な苦痛はもちろんのこと、身体的自由の制限がかかることによって生じるストレスも含まれます。
この章以降は、赤本にそった弁護士基準と、自賠責基準による慰謝料額についての記載です。
なお、任意保険基準については明確でないため省略します。
弁護士基準で入通院慰謝料を計算する場合、原則赤い本「別表1」を使います。
別表1とは、「重傷用」といわれるものです。
むち打ち症で他覚症状がない場合は「別表2」を使うことになります。
ふたつの表は以下です。
たとえば、入院2月、その後通院を12月間したとしましょう。
ここでは、別表1の重傷用を例に計算します。
単純に、入院月数と通院月数が交わる箇所、例だと211万円が慰謝料額となるわけです。
では以下の場合はどうでしょうか。
治療開始から治療終了までの期間が100日間だったとします。
うち30日間入院し、退院後50日通院したとします。
1月は30日とされているため、入院期間は1月です。
通院期間は70日(100日-30日)であると考えますが、この端数(2月と10日)は以下のように計算します。
重傷用の表をご覧ください。
まず、入院1月の金額は53万円です。
入院1月の軸にある通院2月は98万円、通院3月だど115万円です。
通院3月の金額115万円から通院2月の金額98万円を引くと、17万円となります。
この17万円が、通院3月目の1月分の金額です。
さらにこの金額を日割り計算すると、日額5600円(5666…円)となります。
入院1月・通院2月の軸にある98万円と、5600×10日分をたすと、103万6000円と算出されます。
自賠責基準での入通院慰謝料は、以下の計算式で算出されます。
自賠責基準の慰謝料算出方法
さきほどの弁護士基準と同じ例で計算してみましょう。
新基準である日額4300円で計算します。
2の算出額の方が少ないため、43万円が採用されます。
(入通院慰謝料)弁護士基準と自賠責基準の比較まとめ
治療期間100日・入院期間30日・通院日数50日の場合
交通事故により、後遺障害等級に該当する障害が残った場合に請求できる慰謝料です。
被害者ご自身の損害分はもちろんのこと、介護が必要となれば近親者にも損害が発生するため、その分もあわせて請求可能な場合があります。
以下は、後遺障害慰謝料の弁護士基準と自賠責基準が比較できる表です。
等級 | 自賠責* | 弁護士 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1,650 (1,600) | 2,800 |
2級・要介護 | 1,203 (1,163) | 2,370 |
1級 | 1,150 (1,100) | 2,800 |
2級 | 998 (958) | 2,370 |
3級 | 861 (829) | 1,990 |
4級 | 737 (712) | 1,670 |
5級 | 618 (599) | 1,400 |
6級 | 512 (498) | 1,180 |
7級 | 419 (409) | 1,000 |
8級 | 331 (324) | 830 |
9級 | 249 (245) | 690 |
10級 | 190 (187) | 550 |
11級 | 136 (135) | 420 |
12級 | 94 (93) | 290 |
13級 | 57 (57) | 180 |
14級 | 32 (32) | 110 |
* ( )内の金額は旧基準であり2020年3月31日以前に起きた事故に適用します
たとえば弁護士基準の表では1級2800万円ですが、近親者がいた場合の慰謝料については別途請求が可能です。
具体的な金額は、判決内容や和解の有無によるところになります。
相場としては、兄弟の場合で50万円から100万円ほど、両親の場合は200万円ずつくらいと考えられるでしょう。
交通事故により、死亡したことに対して請求できる慰謝料です。
属性が一家の支柱・母親、配偶者・その他と区分され、その金額も変わってきます。
その他の属性は、独身の男女や高齢者・幼児や子どもなどで、ここだけ金額幅があります。
また、死亡した本人分だのみでなく、遺族分が金額に含まれていることが特徴です。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 2500万円 |
その他の場合 | 2000万円~2500万円 |
以下の表は遺族分となり、被害者本人の金額は1人あたり400万円と決まっています。(2020年3月31日以前の事故の場合は1人あたり350万円です。)
また扶養家族がいる場合、以下の金額にそれぞれ200万円ずつ加算されます。
遺族 | 死亡慰謝料 |
---|---|
1人 | 550万円 |
2人 | 650万円 |
3人以上 | 750万円 |
たとえば遺族に配偶者と子がいた場合、被害者本人分400万円に、550万円と200万円を加算した1150万円がその方の死亡慰謝料になるということです。
慰謝料の金額は奥深く、これまで説明したような金額に固定されるわけではありません。
以下では、慰謝料が増額されるケースと減額されるケースについてもみていきましょう。
慰謝料増額事由には、加害者側の悪質な運転や、事故後の不誠実な態度があげられます。
たとえば以下です。
もうすこし程度の軽いものだと、たとえば以下があります。
また被害者の親族が精神疾患にり患したとして、慰謝料増額を認めた裁判例もあります。
反対に、慰謝料が減額されるケースもあります。
たとえば以下です
軽傷だった場合や通院日数が少なかった場合、入通院慰謝料が減額されることがあります。
通院日数が少ないケースだと、通院期間ではなく、実通院日数の3~3.5倍程度で慰謝料計算されることになるでしょう。
無償同乗(好意同乗)とは、運転者の好意によって無償で同乗させてもらったケースをいいます。
無償同乗それ自体が減額理由になるのではありません。
過去の裁判例には、同乗者にも責任があるとして慰謝料減額となったものがあります。
たとえば運転者と同乗者が事故にあい、同乗者に後遺障害1級が認められた場合でも、運転者が飲酒運転をすることを容認していたとして慰謝料減額を認めています。
素因減額には心理的要因と体質的・身体的要因とがあり、心因的要因の代表例はうつ病などの既往症やネガティブな性格です。
身体的要因が問題とされる例としては、椎間板ヘルニアなどの既往症があることにより、治療が長引いてしまうなどです。
そのような要因が認められると、慰謝料や賠償金の減額につながるでしょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了